【お知らせ①】現物給与の価額改正について

2024(令和6)年4月より、現物給与の価額が改訂されますので、お知らせさせて頂きます。

厚生年金保険および健康保険の被保険者が、勤務する事業所より労働の対償として現物で支給されるものがある場合は、その現物を通貨に換算し報酬に合算のうえ、保険料額算定の基礎となる標準報酬月額を求めることになります。現物で支給されるものが、食事や住宅である場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨に換算します。また、自社製品等その他のもので支給される場合は、 原則として時価に換算します(次頁におきまして、各都道府県の価額を掲載しております。)。

なお、本社管理(本社と支店等が合わせて1つの適用事業所になっていること)の適用事業所における支店等に勤務する被保険者の現物給与は、平成25年4月1日以降、支店等が所在する都道府県の価額が適用されています。

以下では、現物給与についてのポイントをQ&A方式で、いくつかご紹介させて頂きます。

Q1:現物給与とはどのようなものか?
A1:給与は、金銭で支給されるのが一般的ですが、住宅(社宅や寮など)の貸与、食事、自社製品、通勤定期券などで支給するものを現物給与といいます。現物給与で支給するものがある場合は、その現物を通貨に換算し、金銭と合算して標準報酬月額の決定を行います。

Q2:現物給与価額の改正は、固定的賃金の変動に該当するのか?
A2:「固定的賃金の変動」に該当します。

Q3:改正された価額は、4月1日から適用するとされているが、4月の給与の締め日が月の途中だった場合、現物給与価額はどのように計算するのか?
A3:現物給与(食事、住宅等)については、給与の締め日は考慮せず、4月分(1カ月分)の報酬として計算します。

Q4:住宅の現物給与価額は1カ月当たりの価額が示されているが、月途中の入居の場合でも、1カ月分の価額により計算するのか?
A4:月途中から入居した場合であれば、日割計算を行います。

Q5:住宅による現物給与の場合、台所・トイレ・浴室・廊下を含めた広さで計算するのか?
A5:含めずに計算します。価額の計算にあたっては、居間、茶の間、寝室、客間、書斎、応接間、仏間、食事室など居住用の室を対象とします。 玄関、台所(炊事場)、トイレ、浴室、廊下、農家の土間などの居住用ではない室は含めません。また、店、事務室、旅館の客室などの 営業用の室も含めません。

※その他詳細につきましては、日本年金機構のホームページ(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150511.html)をご参照ください。

(参考)都道府県別価額一覧 

【お知らせ②】労使協定締結のルールについて

多くの企業では、時間外・休日労働に関する労使協定(いわゆる36協定)の有効期間を4月1日から3月31日と定めているケースが多く、新たな有効期間前に提出を必要となっておりますが、みなさん、対応はお済でしょうか。

36協定は、労働基準法36条(時間外及び休日の労働)に基づく、労使協定となっておりますが、この36協定以外にも、例えば、清算期間が1カ月を超える場合のフレックスタイム制に関する協定(労働基準法32条の4)、時間単位年休に関する協定(労働基準法39条)や育児・介護休業法に 定められている育児休業や介護休業の適用除外に関する協定も労使協定となります。さらに、法律上に労使協定に関する文言がなくとも、弊社ホーム ページでご案内させて頂いている賃金の口座振込み等に関する協定も労使協定の1つとなり、様々な場面で労使協定の締結が必要となります。

そこで今回は、改めて、労使協定の締結ルールについて、見て行きたいと思います。 

1.労使協定とは

そもそも、「労使協定」とは、と言うことになりますが、一言で言えば「使用者とその事業場で働く労働者との間のルール」というのが、適切かもしれません。

労働基準法36条を見てみると、「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。」と規定されております。

この条文内の赤字の部分である、
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①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においては、その労働組合との書面による協定
②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者との書面による協定
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が、「労使協定」と言われるものとなります。

上記労働基準法36条では、労使協定を締結することによって、労働基準法32条で定める週40時間、1日8時間という法律で定められた労働時間 の枠を超えて労働者に労働させた場合であっても、労働基準法違反とはならないこととなります。つまり、法律上の罰則の適用を免れることが出来るという 「免罰的効果」を労働基準法36条に基づく労使協定は持っているということとなります。

以下では、労使協定の締結時に注意すべき締結当事者等について、見て行きたいと思います。

2.労使協定の締結当事者等 

(1)「労働者の過半数」とは

労使協定は、①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合に おいては労働者の過半数を代表する者、との書面による協定となりますが、ここでの「労働者の過半数」には、どのような人が含まれるでしょうか。
まず、「労働者の過半数」の「労働者」とは、労働基準法第9条に定める「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」となります。 しかしながら、労働者(使用され賃金を支払われる者)という視点では、管理監督者や病欠の人、派遣労働者も含まれることとなりますが、 労使協定締結の際の「労働者の過半数」の「労働者」には、①管理監督者、②病欠者、③出張中の者、④長期欠勤者、という直接雇用の者は含めるものの、非直接雇用の派遣労働者は、含めないこととされています。 これは、労使協定は、事業場に使用されているすべての労働者の過半数の意見を問うたるものであるため、上記①~④の者を含めることとなっております。(昭46.1.18 45基収6202号)。

(2)労使協定の締結当事者

労使協定は、以下の①又は②のいづれかと締結する必要があります。
①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合 → 過半数組合
②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合 → 労働者の過半数を代表する者
そのため、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、労働者の過半数を代表する者との労使協定を締結することは出来ないこととなります。 (労働組合が複数あり、どの組合も労働者の過半数で組織されていない場合は、労働者過半数代表との締結が必要となります。)

(3)労働者の過半数を代表する者の選出方法

労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者を選出し、その者と労使協定を締結することとなります。
労使協定を締結した場合であっても、その「労働者の過半数を代表する者」の選出方法が、誤ったものである場合には、労使協定自体が無効となりますので、適正な選出方法で選出された者との締結が必要となります。
労働者の過半数を代表する者の選出方法には、下記の要件がありますので、ご注意ください。
①【 人的要件 】管理監督者ではないこと(労働基準法41条2号に該当する管理監督者ではないこと)
②【手続き要件】投票、挙手その他労働者の話合い、持ち回り決議、労働者の過半数が当該者の選任を指示していることが
    明確になる民主的な手続きで選出されたこと → 使用者の意向によって選出された者でないこと。 

筆者:松本 好人Yoshito Matsumoto 株式会社EPCS沖縄取締役 社会保険労務士法人EOS代表社員 特定社会保険労務士 法学修士、日本労働法学会所属