ダブルワークをしている人は雇用保険がどうなるのか徹底的にわかりやすく解説します

2025年6月16日

近年、副業・兼業を取り巻く環境が急速に変化し、多くの人が「ダブルワーク」という働き方を選択するようになっています。収入の多様化やスキルアップを目的に複数の職場で働く中で、気になるのが「雇用保険はどうなるのか?」という点です。ダブルワークをしていると、雇用保険の加入条件や給付の可否、失業時の対応など、通常の就労とは異なる制度の理解が求められます。本記事では、雇用保険とダブルワークの関係性を中心に、制度の仕組みや手続き方法、注意点、そして今後の制度動向までを詳しく解説していきます。

目次

1.ダブルワークと雇用保険の基本的な関係を理解しよう
1.1 ダブルワークとはどのような働き方かを定義します
1.2 雇用保険の基本構造と適用範囲を解説します
1.3 ダブルワークでも雇用保険に入れるケースと入れないケースを紹介します

2.ダブルワーク時の雇用保険の加入条件とその判断基準
2.1 週の労働時間と賃金支払いの基準について詳しく解説
2.2 複数の職場に勤務している場合の判断ポイント
2.3 パート・アルバイトでも対象になる雇用保険の条件

3.雇用保険の手続きと会社側の対応方法
3.1 主たる事業所の決定とハローワークへの届出
3.2 雇用保険の資格取得手続きと必要書類
3.3 企業側が行うべき対応と注意点

4.失業時におけるダブルワークと雇用保険の取り扱い
4.1 失業保険の支給要件とダブルワーク時の注意点
4.2 再就職手当の支給と副業の関係
4.3 就業促進手当の受給と兼業可能性

5.ダブルワークと雇用保険の今後の法改正と制度動向
5.1 令和6年10月の社会保険適用拡大の影響
5.2 厚生労働省の今後の施策方針とその見通し
5.3 非正規労働者とダブルワーク労働者への対応強化策

6.まとめ:雇用保険 ダブルワークにおける基本と今後の動き
6.1 雇用保険 ダブルワークに関して制度理解と自己管理が重要です

1.ダブルワークと雇用保険の基本的な関係を理解しよう

1.1 ダブルワークとはどのような働き方かを定義します

ダブルワークという言葉は、近年ますます耳にするようになってきました。その背景には、働き方改革の推進、副業解禁の流れ、さらには生活費補填やキャリア形成のために複数の収入源を持つというニーズの高まりがあります。ダブルワークとは、単に「複数の仕事を持つこと」ではなく、複数の雇用契約を同時に並行して遂行する就業形態を指します。

例えば、昼間は正社員として会社に勤め、夜はアルバイトをしているケースや、週3日はA社、週2日はB社に勤務するなど、形態は多種多様です。このような働き方は、収入の安定化や自己実現の手段として非常に魅力的ですが、その一方で、労働時間の管理や税金、社会保険・雇用保険の取り扱いといった問題に直面することもあります。

とりわけ雇用保険の観点からは、「主たる勤務先はどこか」「保険料はどの事業所から支払うのか」など、制度上の制約が明確に存在します。これらを正しく理解せずにダブルワークを開始してしまうと、いざという時に給付を受けられなかったり、不正受給とみなされるリスクさえあります。ダブルワークを始める際には、まずその定義と基本的な枠組みを正しく把握しておくことが不可欠です。

1.2 雇用保険の基本構造と適用範囲を解説します

雇用保険は、働く人が安心して働き続けるためのセーフティネットとして設けられた国の制度です。失業した際に一定の給付を受けられる「失業等給付」だけでなく、再就職を促進する「就職促進給付」、育児や介護と両立するための「育児休業給付」や「介護休業給付」など、さまざまな支援が用意されています。

この制度の対象になるためには、「一定の条件を満たす雇用契約に基づいて働いていること」が必要です。具体的には、1週間あたりの所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上継続して雇用される見込みがあることが原則条件です。これらの条件を満たしている場合、会社は原則としてその労働者を雇用保険に加入させなければならず、保険料の一部を給与から天引きします。

適用範囲については、正社員はもちろん、パートタイマーやアルバイト、契約社員であっても、条件を満たせば対象となります。一方で、短期契約や日雇い労働者は、例外として適用外になるケースがあるため注意が必要です。

ダブルワークの場合、この制度がさらに複雑になります。なぜなら、複数の勤務先がある場合、どの事業所が「保険の対象」となるのかの判断が必要になるからです。基本的には「主たる事業所」のみで加入することになるため、副業先では加入できないのが通常です。したがって、雇用保険の構造を理解し、自分の働き方がどのように適用されるかを知っておくことが、非常に重要です。

1.3 ダブルワークでも雇用保険に入れるケースと入れないケースを紹介します

ダブルワークをしている場合でも、雇用保険に加入できるかどうかは「どの勤務先が主たる事業所か」によって決まります。日本の雇用保険制度は、複数の事業所で働く人がすべての職場で保険に入ることを前提としていません。つまり、たとえ複数の職場で条件を満たしていても、加入できるのは基本的に1社だけです。

加入できるケースは、次のような状況が想定されます。たとえば、A社で週30時間働き、B社では週10時間勤務している場合、A社が「主たる事業所」と判断され、A社で雇用保険に加入します。ここでは、労働時間と収入の多寡が判断材料となり、両者を比較して明らかに主であると判断できる事業所が対象となります。

一方、加入できないケースとしては、以下のような例が挙げられます。A社、B社ともに週15時間勤務で、労働時間と収入が同程度の場合、どちらを主とするかの判断が困難となり、結果としてどちらの事業所でも雇用保険の加入対象とならない可能性があります。このようなグレーゾーンでは、ハローワークに相談することが推奨されます。

また、副業先のみで働く時間が条件を満たしていたとしても、主たる事業所での就業が継続している限り、副業先では雇用保険に加入できません。さらに、個人事業主や業務委託契約で働く形態は、そもそも雇用関係に該当しないため、雇用保険の対象にはなりません。

したがって、ダブルワークを始める前には、自分の働き方が雇用保険にどう関係するのか、どの事業所で加入すべきかを正確に理解することが大切です。必要であれば、勤務先の人事部門やハローワークなどの公的機関に相談し、誤解や手続きのミスを未然に防ぐ努力が求められます。

2.ダブルワーク時の雇用保険の加入条件とその判断基準

2.1 週の労働時間と賃金支払いの基準について詳しく解説

雇用保険に加入できるかどうかを判断するうえで、最も基本的で重要な条件が「週の所定労働時間」と「賃金の支払い状況」です。多くの方が、雇用保険は正社員だけのものと思いがちですが、実際にはパートやアルバイトでも条件を満たせば加入が義務付けられています。そこで、まず確認すべきなのが「週の所定労働時間が20時間以上であるかどうか」です。

この「20時間」というラインは、雇用保険制度における非常に大きなボーダーラインです。週20時間未満であれば、どれだけ長く働いても雇用保険の対象とはなりません。逆に、週20時間以上働いていれば、次に確認するべきは「31日以上の継続雇用見込みがあるか」という点になります。ここでいう“見込み”とは、明示的な契約がなくても、勤務実績や企業の雇用慣行から判断されることもあります。

また、賃金についても、報酬として現金で月給・時給・日給などの形で支払われていることが前提となります。現物支給や報酬が不定期である場合、適用の可否が曖昧になる可能性がありますので注意が必要です。

ダブルワークで複数の職場に勤めている場合、それぞれの職場ごとにこの条件を満たしているか確認する必要がありますが、雇用保険に加入できるのは原則として「主たる事業所」のみです。いくら複数の職場で20時間以上働いていても、各社で分散している労働時間が個別に条件を満たさない限り、加入は認められません。つまり、「合算ではなく、個別の事業所での条件達成が必須」となっている点が、非常に重要なポイントです。

2.2 複数の職場に勤務している場合の判断ポイント

ダブルワークにおいて雇用保険をどの勤務先で適用させるかを判断するには、「主たる事業所」を特定することが必要です。ここでの主たる事業所とは、単に最初に勤めた会社や、長く勤めている会社ではなく、労働時間や賃金の額など客観的な基準に基づいて定められます。

たとえば、A社で週30時間勤務し、B社では週15時間勤務している場合、明らかにA社の方が労働の比重が高く、A社が主たる事業所として扱われるのが一般的です。この場合、A社で雇用保険に加入することになります。一方、両方の職場で週20時間ずつ働いていて、収入にも大きな差がないようなケースでは、主たる事業所の判断が非常に難しくなります。こうしたグレーなケースでは、労働者本人の意向を加味したうえで、各勤務先と協議し、ハローワークに申請することで、主たる事業所を確定することが求められます。

重要なのは、曖昧なままにしておくと、いざ失業した際に給付を受けられなかったり、重複して加入していた場合には保険料の返還など煩雑な手続きが発生するリスクがあるという点です。また、勤務先同士がダブルワークを把握していないケースも多く、雇用保険の資格取得届が重複して出されてしまうこともあります。こうしたトラブルを未然に防ぐには、事前に雇用保険の主たる事業所について明確にしておく必要があります。

制度上、「主たる事業所でのみ加入可能」というルールは変更されていないため、雇用保険の恩恵を受けたい場合は、自分の勤務実態に応じて、正確な判断と手続きを行うことが何よりも大切です。

2.3 パート・アルバイトでも対象になる雇用保険の条件

正社員でなくても、条件さえ満たせば雇用保険に加入できるというのは、意外と知られていない事実です。特に、パートやアルバイトといった非正規雇用の方は、「自分は対象外だ」と思い込んでいるケースが少なくありません。しかし、実際には雇用保険の加入要件を満たしているにもかかわらず、雇用主側の手続きミスや理解不足で未加入のまま働いている例が多数存在します。

パートやアルバイトでも、「週20時間以上の勤務」「31日以上の継続雇用見込み」という基本条件は、正社員と同じです。加えて、労働契約に基づいて定期的に賃金が支払われていることが条件となります。このように明確な基準があるにもかかわらず、企業側の「パートだから加入させなくてよい」という誤解によって、加入漏れが起こってしまうのです。

特にダブルワークの場合、2社目の勤務が「パート」や「短時間労働」である場合には、主たる事業所ではないとして雇用保険の対象外とされがちです。しかし、2社とも労働時間が20時間以上で、どちらを主とするか判断が難しい場合には、雇用者の意向を尊重した上で申請することも可能です。

また、雇用保険への加入は、失業時の給付を受けるだけではなく、再就職手当や育児休業給付などの支援制度も利用できるという点で、非常にメリットが大きい制度です。したがって、パートやアルバイトであっても、条件を満たしている場合は積極的に加入を検討すべきです。

労働者自身も、自らの勤務条件を客観的に把握し、雇用保険に加入できるかどうかをしっかり確認することが大切です。必要に応じて、勤務先の人事担当者やハローワークに相談することで、制度を正しく利用し、自らの労働環境を守ることが可能となります。

3.雇用保険の手続きと会社側の対応方法

3.1 主たる事業所の決定とハローワークへの届出

ダブルワークをしている人が雇用保険に加入する際に、最初に必要となるのが「主たる事業所」の決定です。これは、どちらの勤務先で雇用保険の手続きを行うかを判断するためのものであり、制度上、複数の職場で同時に雇用保険に加入することはできないため、非常に重要な工程となります。

主たる事業所を判断する基準は、主に「労働時間」「収入の多寡」「業務内容の継続性」などに基づきます。たとえば、週に30時間働くA社と、週10時間の勤務であるB社を比較した場合、明らかにA社が主たる事業所となります。一方で、勤務時間や収入がほぼ同程度の場合は、労働者の意向も反映されることがあります。

主たる事業所が決まったら、その会社がハローワークに「雇用保険資格取得届」を提出します。この際、他社での就労状況や、勤務時間、賃金の情報などを記載する必要があり、正確な情報提供が求められます。また、必要に応じて労働者本人からの申立書や、複数勤務先の契約書の写しなどが必要となる場合もあります。

この手続きが適切に行われていないと、失業時に保険給付を受けられなかったり、給付金の過誤支給につながる可能性もあります。そのため、企業側としても、労働者がダブルワークをしていることを把握し、主たる事業所としての責任を果たすことが非常に重要になります。

3.2 雇用保険の資格取得手続きと必要書類

雇用保険への加入は、労働者本人が自分で申し込むのではなく、基本的に雇用主が手続きを行います。手続きの名称は「雇用保険資格取得届」で、これは雇用が開始された日から10日以内に、会社がハローワークへ提出しなければならないものです。この提出が遅れると、雇用保険の給付を受ける権利を損なう可能性があるため、企業の義務として非常に重要です。

提出時に必要となる書類には、労働契約書、給与明細、労働条件通知書、就業規則、本人確認書類(マイナンバーや運転免許証など)の写しなどがあります。ダブルワークをしている場合は、他社での勤務状況を記した書類(勤務証明書や労働条件通知書)を求められることもあります。

また、正確な情報を記載するためには、労働者からのヒアリングも不可欠です。「他にどのような勤務をしているか」「どの勤務先が主たる事業所にふさわしいか」といった情報を聞き取った上で、会社側は必要な処理を行わなければなりません。これを怠ると、後にトラブルが発生するリスクが高くなります。

一度手続きが完了すると、労働者には「雇用保険被保険者証」が交付されます。この証明書は、失業保険の申請や各種給付の受給に必要不可欠なものであり、再就職の際にも活用される重要書類です。労働者はこれを保管し、転職などで次の会社に提示することになります。

3.3 企業側が行うべき対応と注意点

ダブルワークをしている労働者が自社に在籍している場合、企業側は通常以上に制度に対する正確な知識と配慮が求められます。まず、雇用契約を締結する段階で、労働者が他社でも就労している可能性を把握するためのヒアリングが不可欠です。なぜなら、勤務時間や収入の合計が社会保険や雇用保険の適用基準に達するかどうかを判断する材料となるからです。

加えて、労働者がダブルワークであることが判明した場合、企業は労働時間や勤務条件を総合的に検討したうえで、雇用保険の手続きを正確に行う必要があります。特に重要なのが、「主たる事業所」としての位置づけが適切であるかどうかの判断です。誤った判断で手続きを進めた場合、ハローワークから修正の指示が入ったり、過去に遡って保険料の返還や追加徴収が発生することもあります。

また、企業には雇用保険の加入義務だけでなく、定期的な資格確認や更新、離職時の資格喪失届の提出といった事務的な義務も発生します。特に離職時には、他社の勤務状況を踏まえた適切な離職票の記載が求められるため、ミスが許されません。

さらに、労働時間の適正な把握も重要です。ダブルワークをしている場合、過労や過密労働によって労働者の健康を損なうリスクもあるため、企業は36協定や労働基準法の観点からも労働時間管理を徹底しなければなりません。

このように、企業にとってダブルワークをしている労働者への対応は、単なる雇用保険手続きにとどまらず、就業管理やコンプライアンスの観点からも非常に重要な業務です。労働者との信頼関係を築くとともに、適正な制度運用を心がけることが、トラブルのない雇用環境を実現する鍵となります。

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4.失業時におけるダブルワークと雇用保険の取り扱い

4.1 失業保険の支給要件とダブルワーク時の注意点

雇用保険の中でも特に注目される制度が、失業時に支給される「基本手当」、いわゆる失業保険です。これは、何らかの理由で仕事を辞めざるを得なくなった際に、次の職を見つけるまでの生活を支えるための給付制度です。しかし、ダブルワークをしている人にとって、この失業保険の制度は複雑で、知らなければ損をしてしまう可能性があります。

失業保険を受給するためには、「離職したこと」「就職の意思と能力があること」「積極的に求職活動をしていること」「失業状態であること」という4つの基本的な要件を満たしている必要があります。この中でも特に誤解されやすいのが、「失業状態」という要件です。これは単に会社を辞めたという意味ではなく、「働いていない=収入を得ていない状態」であることが求められます。

したがって、ダブルワークをしていて一方の職場を退職した場合でも、もう一方の職場で働き続けている限り、原則として「完全失業」には該当せず、基本手当の受給対象にはなりません。例外的に、「残った職場での勤務が週20時間未満」かつ「雇用保険に加入していない場合」は、一部の条件下で受給対象となる可能性もありますが、判断は非常に繊細です。

誤って申請してしまい、給付を受けた後に不正受給が発覚すれば、返還だけでなくペナルティが課されることもあります。ダブルワークをしている場合は、自身が「失業状態にある」と言えるのかどうかを冷静に確認し、不安な場合は必ずハローワークに相談してから申請することが重要です。

4.2 再就職手当の支給と副業の関係

再就職手当とは、基本手当の受給資格を持っている人が、所定の条件を満たしたうえで早期に再就職した場合に支給される給付金です。この制度は、失業者の早期再就職を促進するためのインセンティブであり、再就職のタイミングによっては数十万円の支給を受けられるケースもあるため、多くの人にとって魅力的な制度です。

ただし、ダブルワークや副業がある場合、この制度を利用する際には慎重な判断が求められます。まず、再就職手当の支給条件には、「再就職先で雇用保険の被保険者となること」が含まれています。つまり、業務委託契約やフリーランス、個人事業主としての開業など、被保険者にならない働き方では対象外となってしまいます。

さらに、問題となるのが「再就職」と見なされるかどうかです。例えば、以前から続けていた副業を本業化するケースでは、ハローワークから「それは新たな就職ではなく、継続勤務である」と判断されることがあり、再就職手当の支給を受けられない可能性があります。過去に副業で働いていた会社にフルタイムで転職する場合も、時期や契約形態によって判断が異なるため注意が必要です。

副業と本業の境界が曖昧なまま申請を行ってしまうと、後から「不正受給」とみなされることもあります。再就職手当の申請を検討する際には、自分の再就職が条件に合致しているかを、ハローワークで確認することが不可欠です。

4.3 就業促進手当の受給と兼業可能性

雇用保険の給付の中には、就業を促すための「就業促進手当」があります。これは、失業状態にある人が一時的な就業機会を得た場合や、短時間勤務から再スタートする場合などに支給される制度で、生活の安定を図りつつ就業意欲を維持する目的があります。具体的には、「就業手当」「再就職手当」「常用就職支度手当」などが存在し、それぞれ条件や対象者が異なります。

特に注目されるのが「就業手当」で、これは求職活動を継続しながら短期的に働いた際に、基本手当の一部を受け取ることができる制度です。ただし、ここでもダブルワークとの関係が問題になります。既に副業を持っている場合、その収入や労働時間によっては「就業状態」とみなされ、就業手当の支給対象から外れることもあるのです。

さらに、就業促進手当は「求職活動を続けていること」が前提となっているため、副業の規模や内容が「就職活動の妨げになる」と判断されれば、支給されない可能性があります。たとえば、自営業を営みながら求職活動をしていると主張しても、活動実態がないと判断されれば却下されてしまいます。

このように、就業促進手当は収入との兼ね合いによって、非常に複雑な判断が求められます。ハローワークでは、月ごとの収入報告や就業状況の詳細提出を義務付けており、虚偽報告が発覚した場合は、返金や制裁措置の対象になります。申請にあたっては、働き方と給付条件の整合性を十分に検証したうえで、慎重に行動することが求められます。

5.ダブルワークと雇用保険の今後の法改正と制度動向

5.1 令和6年10月の社会保険適用拡大の影響

令和6年10月から施行される社会保険の適用拡大は、多くの労働者にとって重要な転換点となります。この改正の背景には、非正規労働者や短時間勤務者が年々増加し、従来の制度では十分に生活保障が図れないという社会的な課題があります。その中で、ダブルワークという働き方も例外ではなく、大きな影響を受けることになります。

具体的には、これまで社会保険の加入対象となっていなかった「従業員51人以上の企業で週20時間以上働く者」に加え、令和6年10月以降は「従業員51人未満の企業」で働く人にも対象が拡大されます。これにより、これまで非適用であったパート・アルバイトの多くが社会保険や厚生年金への加入を求められることになり、同時に雇用保険についても再確認が必要になります。

ダブルワークをしている人の場合、どちらの勤務先が社会保険・雇用保険の適用対象となるかが改めて問題となります。たとえば、これまで適用除外だった副業先が対象となった場合、その勤務実態が重視されるようになります。また、労働時間や賃金の合算によって新たに適用されるケースも出てくるため、企業・労働者ともに制度への理解を深めておくことが欠かせません。

この改正によって、保障の面ではメリットが広がりますが、同時に保険料負担の増加や手続きの煩雑化といった課題も浮かび上がります。特にダブルワークの人は、複数の勤務先と調整を図る必要があるため、事前の情報収集と的確な対応が求められることになります。

5.2 厚生労働省の今後の施策方針とその見通し

厚生労働省は現在、雇用保険制度をはじめとした社会保障制度の見直しを進めています。その方向性として、「多様な働き方への対応」が明確に掲げられており、ダブルワークやフリーランスといった非典型的な就労形態に対する制度の整備が重要課題とされています。

これまでは、正社員を中心とした制度設計であったため、複数の勤務先を持つ労働者や、短時間勤務者には不十分な対応しかなされてきませんでした。しかし、働き方の多様化が進むなかで、これまで対象外とされていた労働者にも一定の保障を与える必要があるとする考え方が広がってきています。

今後は、雇用保険の「二事業」部分(教育訓練給付、求職者支援訓練など)の充実や、複数勤務先の労働時間を合算して保険加入の基準とする案、あるいはマイナンバーを活用した労働実態の一元管理制度の導入などが検討されています。これによって、ダブルワークで働く労働者に対する不公平感を解消し、制度の公平性と持続性を高めることが期待されています。

ただし、制度改革には財政負担や事務処理の複雑さなど多くの課題も存在します。したがって、現段階ではモデル事業やパイロット施策として限定的な形で導入される可能性が高く、急速な全体適用は見込まれていません。それでも、厚生労働省の方針として「ダブルワークを前提とした制度整備」が今後の基本線になることは間違いなく、今後の動向に注目が集まります。

5.3 非正規労働者とダブルワーク労働者への対応強化策

日本の労働市場では、非正規雇用の労働者が全体の4割を超えると言われており、その中にはダブルワークをしている人も多く含まれます。こうした人々にとって、これまでの雇用保険制度や社会保障制度は「適用外」となることが多く、セーフティネットとして十分に機能していないという実情がありました。

そのため、政府は今後、非正規・ダブルワーク労働者への対応を強化するための複数の施策を打ち出す予定です。まず第一に検討されているのが、雇用保険の「対象拡大」です。たとえば、週20時間未満であっても一定の賃金を得ている場合には、特例的に雇用保険の適用を認める制度などが議論されています。

次に重要なのが、情報提供と制度周知の徹底です。現在、ダブルワーク労働者の多くが、自身が制度の対象かどうかすら把握していないという状況があります。そのため、労働局やハローワークなどを通じた広報活動の強化、企業への説明義務の強化、オンラインでの加入資格確認ツールの提供といった対応策が計画されています。

さらに、企業側への支援策として、雇用保険手続きの簡素化や、マイナンバーを活用した手続きの自動化なども検討されています。これにより、特に中小企業が抱える事務負担の軽減と、労働者に対する対応の迅速化が期待されます。

このように、非正規およびダブルワーク労働者に対しては、制度そのものの改善だけでなく、情報・手続きの両面からの支援が進められていくことになるでしょう。これまで「対象外」であった人たちにも保障を行き渡らせることで、日本の社会保障制度はより公平で持続可能なものへと進化していくはずです。

6.まとめ:雇用保険 ダブルワークにおける基本と今後の動き

6.1 雇用保険 ダブルワークに関して制度理解と自己管理が重要です

現代の多様な働き方の中で、ダブルワークはもはや特別な選択肢ではなく、収入確保やスキルアップの手段として多くの人に活用されています。しかし、その一方で、「雇用保険」に関する誤解や未理解によって、本来得られるはずの給付や制度の恩恵を逃してしまっているケースも少なくありません。

雇用保険制度は、失業や再就職、育児・介護といった人生の転機において、私たちの生活を守ってくれる大切な仕組みです。ダブルワークという働き方においても、正しい制度理解があれば、自分に合った保障を確保することができます。主たる事業所の判断、加入条件の把握、給付時の注意点など、知識と理解が非常に重要となるのです。

また、法改正や制度変更が定期的に行われているため、制度は静的なものではなく、常に「動いている」ことも意識しなければなりません。特に令和6年10月の社会保険の適用拡大は、雇用保険にも波及効果をもたらすため、今後の制度動向を継続してフォローすることが求められます。

企業側にも、ダブルワーク労働者への対応を正しく行う責任があります。雇用保険の手続きを怠れば、労使双方に不利益が生じるため、社内体制の整備や知識のアップデートが不可欠です。労働者自身も「自分の働き方を自分で守る」意識を持ち、正確な情報に基づいて行動することが、安心して働き続けるための第一歩となります。

結論として、ダブルワークと雇用保険は単純に切り離せる問題ではありません。両者を結びつける理解と準備が、人生のあらゆる局面において自分を支える力になります。今後の働き方をより良いものにするためにも、制度に対する継続的な関心と正しい知識の習得が求められています。

【監修者】
  追立龍祐(Ryusuke Oitate)  社会保険労務士 沖縄県社会保険労務士会理事
  社会保険労務士法人EOS沖縄支店長 株式会社EPCS沖縄 社会保険事業責任者

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