働き方改革が進む中で、企業と従業員の双方にとってますます重要性を増しているのが「残業手当の割増率」です。割増率は、ただの数字ではなく、法令順守の指標であり、企業の信頼性を左右する要素でもあります。
特に人事・労務担当者は、正しい知識をもとに残業代の計算を行い、トラブルを未然に防ぐ役割を担っています。本記事では、残業手当の割増率について、基礎知識から実務での具体的な対応方法、そしてコスト削減と労働環境改善を両立するためのヒントまでを網羅的に解説します。
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2025年12月15日
目次
1.残業手当の割増率とは?
1.1 割増率の定義と対象となる労働
1.2 残業手当が発生する条件とは
1.3 36協定との関係と法的義務
2.残業手当の割増率25%が適用されるケース
2.1 1日8時間を超える労働時間
2.2 週40時間を超える通常の残業
2.3 法定労働時間と所定労働時間の違い
3.35%・50%の割増率はどんなときに適用されるか
3.1 法定休日に働いた場合は35%
3.1 月60時間を超える残業や深夜の労働は50%
3.3 割増率が重複するケースの対処法
4.さらに高い割増率になる特殊ケースとは
4.1 残業手当の割増率60%のパターン
4.2 75%以上の割増率が必要になる例外的状況
5.割増率を用いた残業手当の正しい計算方法
5.1 時給換算の計算方法と注意点
5.2 1分単位での残業計算が必要な理由
5.3 みなし残業制の場合の取り扱い
6.適正な支給とコスト削減を両立するために
6.1 業務の見直しで残業自体を削減する工夫
6.2 システム導入で勤怠管理を効率化
6.3 労務トラブルを未然に防ぐ体制づくり
1.残業手当の割増率とは?
1.1 割増率の定義と対象となる労働
残業手当の「割増率」とは、所定労働時間を超えた勤務や特定の時間帯・曜日に働いた際に、通常の賃金に上乗せされる割合のことです。これは労働者を過重労働から守り、企業に対して適正な労働時間管理を促す制度の一環です。たとえば、法定労働時間を超える労働には最低25%の割増が必要で、深夜や休日に働く場合はそれ以上の割合が法律で義務付けられています。
対象となるのは、正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトなどの非正規労働者も含まれます。つまり、企業は全従業員に対して、適切な割増率を理解し適用する責任があります。
1.2 残業手当が発生する条件とは
残業手当が発生するのは、原則として「法定労働時間を超えて働いたとき」です。日本の労働基準法では、1日8時間または週40時間を超える勤務を「時間外労働」と定義しており、この時間に対しては25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
また、「所定労働時間」とは会社ごとに就業規則で定められた勤務時間のことですが、この所定時間内であっても法定労働時間を超えれば割増の対象となります。例外なく全企業に適用されるルールであり、無意識のうちに違法な未払い残業をしてしまうリスクがあるため、理解は不可欠です。
1.3 36協定との関係と法的義務
割増率の適用には、「36(サブロク)協定」の存在も重要です。これは、労働基準法第36条に基づく労使協定で、企業が従業員に法定時間を超えて働いてもらう場合には、必ず事前にこの協定を結び、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
36協定が結ばれていないにもかかわらず残業を命じた場合、法律違反となり、企業には罰則が科される可能性があります。また、36協定には「特別条項付き協定」を加えることもあり、繁忙期に上限を超えて残業させる場合の条件や上限回数、割増率の記載も義務付けられています。
このように、割増率の理解は単なる数字の確認にとどまらず、企業としての法的な対応力やコンプライアンス意識にも直結します。人事担当者や経営層は、こうした基礎知識を押さえた上で、現場の労働管理に落とし込むことが求められます。
2.残業手当の割増率25%が適用されるケース
2.1 1日8時間を超える労働時間
労働基準法により、1日あたりの法定労働時間は原則8時間と定められています。これを超えて働く場合、企業は通常の賃金に25%を上乗せした「時間外労働手当」を支払う義務があります。たとえば、時給1,200円の従業員が9時間働いた場合、1時間分は1,500円(1,200円×1.25)として計算しなければなりません。
このルールは正社員はもちろん、アルバイトやパートタイマーにも適用されます。特に繁忙期などで1日の勤務時間が伸びる職場では、日ごとの労働時間管理が重要です。企業がこの計算を怠ると、未払い残業代としてトラブルに発展するリスクがあります。
2.2 週40時間を超える通常の残業
もう一つ、見落としがちなのが「週40時間」という基準です。1日8時間を超えなくても、1週間の合計労働時間が40時間を超えた時点で、超過分には25%の割増賃金が発生します。たとえば、1日7.5時間勤務でも週6日出勤すると45時間となり、5時間分には割増が必要です。
この「週ベース」での労働時間管理を怠る企業は少なくありません。特にシフト制や交代制の現場では、日ごとの管理だけでなく週単位の集計と確認が欠かせません。人事・総務担当者は、労働時間を日次・週次の両方で把握する体制を整えるべきです。
2.3 法定労働時間と所定労働時間の違い
残業手当の割増率25%が適用される基準を正しく理解するには、「法定労働時間」と「所定労働時間」の違いを知っておく必要があります。法定労働時間とは、法律で定められた上限(1日8時間、週40時間)であり、所定労働時間は企業が独自に定める勤務時間です。
たとえば、ある企業が1日7時間勤務を所定時間としている場合、7時間を超えた1時間には通常の賃金が発生しますが、8時間を超えた時間からが「時間外労働」となり、割増率25%が適用されます。このように、所定時間を超えてもすぐに割増が発生するわけではない点は注意が必要です。
労働者にとっては残業代が適切に支払われることが重要ですが、企業側にとっても不適切な対応は大きなリスクにつながります。割増率25%の適用基準を正しく理解し、確実な勤怠管理を行うことが、法令遵守と労使の信頼関係維持の鍵となります。
3.35%・50%の割増率はどんなときに適用されるか
3.1 法定休日に働いた場合は35%
労働基準法では、労働者には毎週少なくとも1回、または4週間に4回の休日を与えることが定められており、これを「法定休日」と呼びます。この法定休日に勤務した場合、企業は通常の賃金に加えて35%の割増賃金を支払う義務があります。
例えば、会社の休日が日曜日で、その日に出勤して働いた場合、たとえ労働時間が1時間でも、法定休日労働とみなされ、35%の割増が発生します。時給1,200円であれば、1時間あたり1,620円(1,200円×1.35)となります。
法定休日は企業ごとに異なる可能性があるため、「休日出勤=35%」とは限らない点には注意が必要です。所定休日(企業が定めた休日)と混同しないよう、就業規則で明確に定義し、従業員と共通認識を持つことが大切です。
3.2 月60時間を超える残業や深夜の労働は50%
時間外労働が月60時間を超えた場合、超過分には50%の割増賃金を支払うことが法律で定められています。これは、長時間労働による健康被害や生産性低下を防ぐための措置です。2023年4月からは中小企業にもこのルールが適用されるようになり、すべての企業が対象となりました。
たとえば、月の時間外労働が70時間だった場合、最初の60時間分には25%の割増が、残りの10時間分には50%の割増が適用されます。これを怠ると、企業は未払い残業代に加え、罰則や労働トラブルに直面することになります。
また、これに加えて「深夜労働」(22時~翌5時)も50%の割増となるケースがあります。たとえば、月60時間を超える残業が深夜帯に行われた場合、50%+25%で合計75%の割増になる可能性があるため、勤怠管理と時間帯の記録が非常に重要です。
3.3 割増率が重複するケースの対処法
実務上で厄介なのが、複数の割増要件が重なるケースです。たとえば、法定休日に深夜の時間帯で残業が発生した場合、35%(休日)+25%(深夜)=60%の割増となります。同様に、60時間超の時間外労働が深夜帯であれば、50%+25%=75%が適用されることになります。
このようなケースは計算が煩雑になりやすいため、勤怠管理システムや給与計算ソフトの導入が有効です。手作業での対応はミスの原因になりやすく、従業員との信頼関係にも影響を与えかねません。
企業に求められるのは、単に「割増率を覚えること」ではなく、「どの状況でどの割増が適用されるかを判断できる仕組みづくり」です。的確な対応が、トラブルの未然防止と従業員満足の向上に直結します。
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4.さらに高い割増率になる特殊ケースとは

4.1 残業手当の割増率60%のパターン
割増率が60%に達するケースは、主に「法定休日」と「深夜労働」が重なったときに発生します。これは、労働基準法でそれぞれ別個に割増率が規定されており、両者が重なった場合には合算されるためです。たとえば、法定休日に22時以降の深夜労働を行った場合、35%(休日労働)+25%(深夜労働)で合計60%の割増が適用されます。
企業がこのような高い割増率に対応するには、勤怠記録を詳細に管理し、法定休日と時間帯の重なりを正確に把握する必要があります。特に24時間稼働する工場や医療機関、宿泊業などでは発生頻度が高くなるため、システムによる自動計算が強く推奨されます。
このような特別なケースでは、誤って25%だけの割増で処理してしまうと、未払い分が大きく膨らみ、労働基準監督署の調査や従業員からの請求リスクにつながります。法令遵守の徹底が不可欠です。
4.2 75%以上の割増率が必要になる例外的状況
割増率が75%以上になるのは、さらに複数の要件が重なったときです。たとえば、月60時間を超える時間外労働が深夜に行われた場合、50%(60時間超)+25%(深夜労働)で合計75%となります。さらに、これが法定休日に該当すれば、最大で100%以上の割増が発生することもあります。
これらは一見まれに思えますが、繁忙期の製造業や物流業界、繁華街でのサービス業などでは実際に発生しています。特に管理職でない従業員に過度な残業をさせている企業では、想定外の人件費が発生し、経営に影響を与える可能性すらあります。
また、従業員側も労働環境に敏感になっており、法的な知識を持って自ら労務管理に疑問を持つケースが増えています。企業としては、割増率が高くなる特殊ケースを理解し、必要な予算措置や管理体制を整備しておくことが求められます。
高割増率の適用ミスは、企業にとって「コストの問題」だけでなく、「信頼の問題」でもあります。正確な知識と仕組みの導入によって、企業の健全な成長と働きやすい職場環境の両立が実現できるのです。
5.割増率を用いた残業手当の正しい計算方法
5.1 時給換算の計算方法と注意点
残業手当を正しく支給するためには、まず基本となる1時間あたりの賃金を正確に算出することが必要です。月給制の場合、月額給与を月の平均所定労働時間で割ることで「基礎時給」を求めます。たとえば、月給30万円、所定労働時間が月160時間なら、1時間あたりの賃金は1,875円(300,000円÷160時間)です。
この時給をもとに、残業時間に応じた割増を加えて残業手当を計算します。例えば、1時間の残業に25%の割増が適用されるなら、1,875円×1.25=2,344円が支給額となります。なお、交通費や各種手当の扱いについては就業規則に基づき、含めるか除外するかを明確にしておくことが大切です。
5.2 1分単位での残業計算が必要な理由
多くの企業では残業時間を15分単位や30分単位で切り捨てたり、切り上げたりして計算しているケースがありますが、これは法律違反となる可能性があります。労働基準法では、残業時間は「1分単位」で計算することが原則とされており、たとえ5分の残業であっても、正確に計上しなければなりません。
このルールを守らず、便宜的に切り捨てを繰り返すと、未払い残業代としてまとまった金額を請求されるリスクが生じます。小さな金額でも積み重ねれば数十万〜数百万円に膨らむこともあるため、勤怠管理の正確性は非常に重要です。
5.3 みなし残業制の場合の取り扱い
一部の企業では「みなし残業制(固定残業制)」を採用しており、あらかじめ月〇時間分の残業代を給与に含めるという制度です。この制度自体は違法ではありませんが、運用を誤るとトラブルに発展します。
みなし時間を超えた労働があった場合、その超過分には当然ながら追加の残業手当を支給する必要があります。たとえば、20時間分の残業代を含んでいたとしても、実際に30時間残業をすれば、10時間分は別途割増をつけて支払わなければなりません。
また、みなし残業時間の明示や、対象手当の内訳を給与明細に記載しないと無効と判断されることがあります。従業員との信頼関係を維持するためにも、制度の正確な運用と情報開示が欠かせません。
企業としては、計算の透明性と正確性を確保するために、給与計算ソフトやクラウド型の勤怠管理システムを活用するのが効果的です。これにより、法令違反を防ぎ、労働者にとっても公正な処遇が実現できます。
6.適正な支給とコスト削減を両立するために
6.1 業務の見直しで残業自体を削減する工夫
残業手当の割増率が増えるほど、企業にとっては人件費の負担が重くなります。だからこそ、そもそもの残業を減らす取り組みが不可欠です。その第一歩は「業務の棚卸しと優先順位の見直し」です。定型業務の中に、効率化できる作業や、担当者の重複による非効率が潜んでいることも少なくありません。
また、業務量が偏っている部署や個人に対して、定期的なヒアリングを実施し、ボトルネックの早期発見と解消を図ることが重要です。単に「残業するな」と指導するのではなく、業務の流れを根本から見直す姿勢が、従業員の納得感と生産性向上につながります。
6.2 システム導入で勤怠管理を効率化
残業時間の可視化と管理は、属人的なやり方では限界があります。そこで効果的なのが、クラウド型の勤怠管理システムの導入です。出退勤の打刻、時間外労働の自動集計、アラート機能などを通じて、リアルタイムで労働時間の異常を察知し、早期対応が可能になります。
また、こうしたシステムは残業の原因分析にも役立ちます。部署別・個人別に時間外労働の傾向を把握することで、改善策の優先順位をつけやすくなります。人事担当者の作業負担も軽減され、ミスによる未払い残業のリスクも低下します。
6.3 労務トラブルを未然に防ぐ体制づくり
残業手当に関する法令違反や未払いは、労働者からの告発やSNSでの拡散により、企業の信用を著しく損なうおそれがあります。トラブルを未然に防ぐには、就業規則や賃金規程に割増率や支給ルールを明記し、従業員への説明責任を果たすことが前提です。
さらに、相談窓口や定期的な面談制度を設けることで、従業員が不満を抱える前に声を上げられる環境を整えることも重要です。人事部門や管理職が法知識を常にアップデートし、現場に落とし込める体制が整っていれば、大きな問題には発展しにくくなります。
割増率の理解と支払い体制を整えるだけでなく、企業としての働き方改革を進める姿勢が、結果的に残業削減とコスト削減の両立につながります。これは単なる経費対策ではなく、持続可能な経営戦略の一部としてとらえるべき課題です。
中小企業では、社会保険の手続きは人に依存しやすく属人化しがちで担当者が急に休めば、すぐに業務が滞るリスクもあります。
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