働き方改革の一環として注目されている「36協定」の新様式。2021年4月から段階的に施行され、2024年には完全移行となりました。これにより、書式の変更や押印の省略、電子申請の利便性向上など、多くの実務担当者に影響を与えています。
本記事では、36協定新様式の変更点や正しい記載方法、業種別の注意点などを具体的な記入例とともに解説します。労務管理に携わる方はもちろん、これから対応を進める企業の方も、ぜひ参考にしてください。
2026年1月13日
目次
1.36協定とは何か?
1.1 時間外労働・休日労働を可能にするための法定手続き
1.2 36協定書と36協定届の違いを押さえておこう
2.36協定新様式はいつから適用されたのか
2.1 2021年4月から段階的にスタートし現在は完全移行
2.2 特別条項の有無による様式選択制に注意
3.36協定新様式の変更点をわかりやすく解説
3.1 署名・押印が原則不要になった背景と理由
3.2 チェックボックスの新設で協定当事者の確認が明確に
3.3 電子申請限定の本社一括提出が可能に
4.業種別!36協定新様式の記入例とダウンロード情報
4.1 建設業・運送業での記入ポイントと注意点
4.2 厚生労働省・トラック協会の記入例リンクまとめ
5.36協定新様式でよくあるミスとその回避法
5.1 特別条項の運用でやってはいけない記載例
5.2 届出タイミングと提出先の誤りに注意
5.3 記載ミスを防ぐためのチェック体制を整える
6.36協定新様式は企業が適切に対応すべき重要な法的義務
6.1 法改正を機に36協定新様式を正しく理解して活用しよう
1.36協定とは何か?
1.1 時間外労働・休日労働を可能にするための法定手続き
働き方改革が進む中で、「36協定」という言葉を一度は耳にしたことがある方も多いでしょう。しかし、実際にその中身や必要性を理解している人は、労務担当者を除けば限られています。
36協定とは、労働基準法第36条に基づき、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働させる場合に、労使間で締結する必要のある協定です。この協定を締結し、労働基準監督署へ届け出ることで、企業は時間外労働や休日労働を合法的に命じることが可能になります。
一方で、36協定を締結していないにもかかわらず、社員に残業を命じることは違法行為に該当し、罰則の対象となることもあります。そのため、企業にとって36協定は、労働時間管理の根幹とも言える重要な書類なのです。
1.2 36協定書と36協定届の違いを押さえておこう
「36協定書」と「36協定届」は混同されやすい言葉ですが、役割は異なります。36協定書とは、企業と労働者代表との間で締結する労使協定そのものであり、署名や押印などで法的効力を持たせる書面です。これに対し、36協定届は、その協定内容を行政に届け出るための書類で、労働基準監督署への提出が義務付けられています。
さらに、36協定には「一般条項」と「特別条項」の2つのパターンがあります。前者は、月45時間・年360時間以内の時間外労働を定める場合、後者はこれを超える場合に必要です。特別条項を締結する際には、より厳格な要件や健康確保措置の記載が求められるなど、記載内容にも大きな違いがあります。
36協定は単なる手続きではなく、従業員の働き方や健康を守るうえでも極めて重要な制度です。正しく理解し、適切に対応することで、企業としての信頼性やコンプライアンスの向上にもつながるでしょう。
2.36協定新様式はいつから適用されたのか
2.1 2021年4月から段階的にスタートし現在は完全移行
36協定の新様式は、2021年4月から適用が始まりました。この変更は「働き方改革関連法」に基づき、より実務的かつ透明性の高い制度運用を目指して導入されたものです。
多くの中小企業では対応が遅れがちでしたが、猶予期間を経て、現在では新様式への完全移行が求められています。特に2024年度からは、旧様式の使用が実務上ほぼ認められなくなっており、今後は新様式での作成・提出が基本となります。
この様式変更により、36協定届のフォーマットが明確に分かれたほか、記載事項も細分化され、誤記入や形式不備による差し戻しが減るよう設計されています。
とはいえ、新様式は項目が多く、見慣れないレイアウトになっているため、初めて対応する企業にはハードルが高く感じられるかもしれません。
2.2 特別条項の有無による様式選択制に注意
新様式で最も大きな変更点の一つが、「特別条項の有無」に応じた様式の選択制が導入されたことです。従来はすべてのケースで同じ様式を使っていましたが、現在は以下のように分かれています。
- 一般条項のみの場合:様式第9号を使用
- 特別条項ありの場合:様式第9号の2を使用
これにより、不要な項目の記載を避けられる一方で、自社に適した様式を選ばなければならないという判断も求められます。また、業種や業務の特性によっては、特別条項の必要性が曖昧な場合もあり、労務の実態を正しく把握することが不可欠です。
誤って異なる様式を提出してしまうと、労働基準監督署から差し戻されるだけでなく、届け出が無効になる恐れもあります。そのため、特別条項を設定するかどうかは、業務の繁閑や残業の実態をふまえて慎重に判断する必要があります。
正しい様式を使い、期限内に提出することが、企業のコンプライアンス維持と従業員の安心につながります。
3.36協定新様式の変更点をわかりやすく解説
3.1 署名・押印が原則不要になった背景と理由
かつて36協定届には、労働者代表や事業主の署名・押印が必須でした。しかし、2021年の法改正以降、署名・押印は原則不要となりました。この変更の背景には、行政手続きのデジタル化と、書類提出に伴う事務負担の軽減があります。特に中小企業では、限られた人員で書類を整える必要があるため、こうした変更は実務的な助けとなっています。
ただし、署名・押印が完全に不要になるわけではありません。36協定届を協定書としても兼ねる場合は、引き続き労使双方の署名・押印が必要です。単に届け出書として作成する場合は省略可能という点に注意しましょう。状況に応じて正しく対応することで、手続きミスを防げます。
3.2 チェックボックスの新設で協定当事者の確認が明確に
新様式では、協定の当事者が正しく選出されているかを確認するためのチェックボックスが追加されました。具体的には、「労働者の過半数代表が適正に選出されたかどうか」を確認・記載する欄が設けられています。
これにより、形だけの選出や、経営側の意向が強く働いた代表の選出が抑制されるようになりました。企業としては、形式的な手続きではなく、実態に即した労使協定を締結することが求められています。誤って不適切な代表を選出して協定を結んだ場合、その効力が否定されるリスクもあるため、注意が必要です。
3.3 電子申請限定の本社一括提出が可能に
もう一つの注目すべき変更点は、電子申請を利用すれば、本社一括で複数の事業場の協定届を提出できるようになった点です。従来は、各事業場ごとに個別提出が必要だったため、大企業を中心に手続き負担が大きいという声が多くありました。
この本社一括提出の仕組みにより、事務効率が飛躍的に向上します。もちろん、電子申請が前提条件となるため、事前にe-GovやGビズIDなどの環境を整えておく必要があります。今後、さらにデジタル化が進むことを考えると、電子申請の導入は企業にとって避けて通れないステップと言えるでしょう。
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4.業種別!36協定新様式の記入例とダウンロード情報

4.1 建設業・運送業での記入ポイントと注意点
業種によって労働環境が大きく異なるため、36協定新様式の記入にあたっては、特に建設業や運送業では注意が必要です。これらの業種は繁忙期の差が激しく、時間外労働の必要性も高いため、特別条項付きの協定を結ぶケースが多く見られます。
たとえば建設業では、天候や工程の遅れにより工期が圧迫されることがあります。そのため、「臨時的な業務の繁忙」を理由として特別条項を設定することが多く、その事由を具体的に記載することが求められます。ただし、漠然と「業務多忙のため」などと書くのはNGで、作業内容や期間、現場の状況などを明確に記載しなければなりません。
運送業においては、繁忙期や突発的な配送依頼への対応が理由となることが一般的です。ただし、「納期対応」や「急な輸送依頼」といった表現では不十分です。「年末年始の流通量増加への対応」「特定顧客からの受注集中」など、より具体的な状況説明が必要です。
また、建設業や運送業の多くは中小企業であり、労働時間の把握がアナログなままの場合もあります。記入にあたっては、月45時間・年360時間という上限時間に抵触しないよう、事前に労働時間の集計と実態把握をしておくことが欠かせません。
4.2 厚生労働省・トラック協会の記入例リンクまとめ
36協定新様式の記入に不安がある場合は、公的機関が提供する記入例を参考にすると安心です。特に厚生労働省のホームページでは、「様式第9号」「様式第9号の2」に対応した最新の記入例がPDFやExcel形式でダウンロード可能です。
建設業や運送業など業種別の記載ポイントが押さえられたサンプルも用意されており、自社の実態に近い例を見つけやすくなっています。
また、トラック協会(全日本トラック協会)でも、運送業向けに特化した36協定届の記入マニュアルや様式記入例を公開しています。これらは業界の実態を反映した内容になっており、実務者にとって非常に参考になります。
必要な様式は「厚生労働省 36協定 新様式」「トラック協会 36協定 記入例」などで検索すれば、該当ページにすぐアクセスできます。記入ミスや形式不備を防ぐためにも、こうした信頼性の高い資料を最大限活用しましょう。
引用サイト:厚生労働省
5.36協定新様式でよくあるミスとその回避法
5.1 特別条項の運用でやってはいけない記載例
36協定新様式を導入したことで、記載内容の明確化が進んだ一方で、新たなミスが生じるケースも増えています。特に注意が必要なのが、特別条項に関する記載です。たとえば、「業務繁忙のため」「顧客の都合による」などの抽象的な理由は、不備として差し戻される可能性があります。
特別条項を適用するには、「なぜ上限時間を超えて働かせる必要があるのか」を明確に示す必要があります。具体的には、「大型案件の集中により工程変更が発生したため」「年末商戦の物流増加による対応が必要なため」といったように、時期や業務内容を明示することが求められます。
また、時間外労働と休日労働の合算上限(月100時間未満、複数月平均80時間以内など)も正しく記載しなければ、協定そのものが無効になる可能性があります。制度の趣旨を理解せずに、ひな形をそのまま流用することは避けるべきです。
5.2 届出タイミングと提出先の誤りに注意
もう一つ多いミスが、届出のタイミングと提出先を間違えるケースです。36協定届は、労働基準監督署に対し、効力発生日の前日までに提出する必要があります。提出が遅れた場合、その期間中に行った時間外労働は法令違反となり、行政指導や是正勧告の対象になりかねません。
また、提出先も事業場単位である点に注意が必要です。事業場が複数ある場合は、それぞれの管轄労働基準監督署に届け出る必要があります。ただし、電子申請を使えば本社一括提出も可能になるため、運用を見直すことで手間を減らすことができます。
こうした基本的なルールを正しく理解していないと、せっかく作成した協定が無効になるだけでなく、会社の信頼を損なうリスクも生まれます。
5.3 記載ミスを防ぐためのチェック体制を整える
記載ミスや形式不備を防ぐには、社内での確認体制を整えることが重要です。労務担当者だけに任せるのではなく、上司や顧問社労士などの複数人で内容をチェックすることで、人的ミスを大幅に減らすことができます。
さらに、厚生労働省や業界団体が提供する最新の記入例を参考にすることも有効です。これにより、自社の状況に応じた正確な記載が可能になり、提出後の差し戻しも回避しやすくなります。
36協定新様式は形式が複雑になった反面、実態に即した記載が求められるようになっています。だからこそ、記入時の細かい確認と、正確な運用がますます重要となっています。
6.まとめ
36協定新様式は、単なる書式の変更ではありません。働き方改革関連法により、企業が従業員の労働時間を適正に管理し、健康を守る責任を果たすための重要な制度設計の一環です。適切に対応しなければ、労働基準法違反として罰則を受けるリスクがあるだけでなく、社内の労務トラブルや従業員の信頼低下にもつながります。
特に新様式では、労働者代表の選出方法の確認や、特別条項の設定要件が厳格化されるなど、従来以上に企業の実態に即した記載と手続きが求められています。つまり、ひな形の流用や前年度のコピーでは済まされないケースが増えているのです。労務担当者は、形式的な作業としてではなく、自社の働き方を反映させた36協定の運用ができているかを常に確認する必要があります。
また、新様式の導入は、企業にとって「見直しの好機」とも言えます。たとえば、現場で長時間労働が常態化していないか、特別条項を乱用していないか、健康確保措置が実施されているかなどをチェックするきっかけになります。このような見直しを経て、従業員にとって健全な労働環境を整備することは、企業の持続的成長にもつながります。
法令順守という最低限の義務を果たすだけでなく、36協定を通じて働き方の質を向上させること。それが、これからの企業に求められるスタンスです。新様式を正しく理解し、企業全体で対応を進めることが、信頼される組織づくりへの第一歩となるでしょう。
経営者にとって「人」と「労務管理」は最も重要な資産です。
だからこそ、複雑な社会保険業務を社内で抱えるよりも、専門家に任せて確実に処理することが、経営リスクを減らす最善策です。
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