2025年9月4日
75歳を迎えると、日本の社会保険制度は大きな転換点を迎えます。これまで加入していた健康保険の資格が自動的に失われ、新たに「後期高齢者医療制度」へと移行するため、制度や手続きに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
さらに、扶養関係の変化や保険料の新たな負担、企業が行うべき資格喪失の届出など、本人や家族、雇用主にとって確認すべきポイントが数多く存在します。
この記事では、75歳以上の社会保険に関する制度の変化や必要な手続きをわかりやすく整理し、安心して日常生活を送るための知識を解説します。
目次
1.社会保険は75歳になるとどう変わるのかを知っておこう
1.1 75歳で健康保険の被保険者資格がなくなる理由
1.2 後期高齢者医療制度への自動移行とその仕組み
1.3 任意継続保険に加入していた人の取り扱い
2.75歳以上の被扶養者はどのような保険制度に入るのか
2.1 被扶養者資格の消失とその影響
2.2 国民健康保険への切り替えの流れ
3.後期高齢者医療制度の負担額と軽減措置を確認する
3.1 後期高齢者医療制度における自己負担割合の仕組みと実際の金額感
3.2 保険料の決まり方と実際の負担額の目安を知っておく
3.2 軽減措置の種類と申請方法のポイント
4.75歳に達した時に企業が行うべき社会保険手続きとは
4.1 企業が行う健康保険の資格喪失届の提出
4.2 年金機構への必要な書類の提出
5.75歳を迎える従業員がいる場合の注意点とは
5.1 よくある見落としとその対策
6.75歳以上になった後の保険証の取り扱いに注意
6.1 後期高齢者医療制度の保険証と旧保険証の区別・管理に注意する
7.厚生年金は75歳になっても関係するのか
7.1 厚生年金の適用は70歳までだが届出義務は75歳以降も存在する
8.家族が75歳を迎えるときの被扶養者の取り扱いに注意
8.1 扶養されていた家族が75歳になると制度が大きく変わる
9.退職後に75歳を迎える人の保険手続きとは
9.1 任意継続から後期高齢者医療制度への移行に注意する
9.2 退職と75歳到達が重なる場合の注意点
10.まとめ:社会保険75歳以上の手続きと注意点をもう一度確認しよう
10.1 社会保険75歳以上の手続きを理解し安心して生活を続けるために
1.社会保険は75歳になるとどう変わるのかを知っておこう
1.1 75歳で健康保険の被保険者資格がなくなる理由
75歳になると、従来の健康保険(協会けんぽや健康保険組合など)の被保険者資格は自動的に喪失します。これは、高齢者の医療をより安定的に支えるために設けられた「後期高齢者医療制度」へ一律で加入する仕組みが導入されているからです。この変更は国の制度設計に基づくもので、個人の希望や申請の有無に関係なく、法律によって強制的に行われます。
被保険者資格が喪失されると、これまで利用していた保険証は無効になります。新たに発行される保険証は、後期高齢者医療制度のものとなり、誕生日の前月下旬ごろに自宅へ郵送されるのが一般的です。
制度変更により自己負担割合や医療機関での取り扱いにも影響が出るため、事前に理解しておくことが重要です。特に慢性疾患などで継続的に医療機関を利用している人は、75歳になる前後での対応を医療機関としっかり確認しておく必要があります。これにより、トラブルや混乱を未然に防ぐことができます。
1.2 後期高齢者医療制度への自動移行とその仕組み
75歳になると、すべての国民は自動的に後期高齢者医療制度に移行します。この制度は、75歳以上の高齢者の医療ニーズに特化して設計されており、各都道府県の「後期高齢者医療広域連合」が運営主体です。加入にあたっては原則として本人の手続きは不要で、住民基本台帳に基づき、誕生日の前月には保険証が発行されます。
制度の特徴として、保険料が所得に応じて決定される点があります。年金収入が一定額以下の場合は保険料が軽減される仕組みがあり、経済的に厳しい高齢者に配慮されています。また、医療費の自己負担割合も所得により1割、2割、3割と変動します。
一方で、高額な医療を受けた際には「高額療養費制度」も適用され、負担額が一定以上にならないよう制度設計がされています。高齢者が安心して医療を受けられるよう、制度全体で支援体制が整えられているのです。
1.3 任意継続保険に加入していた人の取り扱い
会社を退職した後、任意継続被保険者として健康保険に加入している人も少なくありません。これは、最長で2年間、退職前と同じ保険に加入できる制度で、退職後の医療保障を安定させるために多くの人が利用しています。しかし、任意継続中であっても75歳の誕生日を迎えると、その資格は自動的に消失します。
つまり、任意継続中であっても、他の制度と同様に、後期高齢者医療制度に自動的に加入することになります。保険料は任意継続時と比べて安くなることもありますが、逆に高くなることもあるため、切り替えのタイミングでしっかり確認しておく必要があります。
また、任意継続は保険料を自分で納めていたのに対し、後期高齢者医療制度では原則として年金からの天引き(特別徴収)になります。ただし、年金受給額が一定以下の場合は口座振替による普通徴収となるケースもあります。この切り替えにより、支払い方法や時期が変わるため、家計管理にも影響を与えることがあります。
任意継続をしていた人にとっては、75歳という節目は再び制度変更を経験するタイミングとなります。円滑な切り替えのためには、制度内容や納付方法の違いを事前に理解し、必要に応じて保険窓口への相談を行うことが安心につながります。
社会保険任意継続制度について詳しく解説した記事はこちらになりますので、あわせてお読みください。
参考記事:社会保険任意継続と国民健康保険の違いを徹底比較して退職後の最適な保険選びを解説
2.75歳以上の被扶養者はどのような保険制度に入るのか
2.1 被扶養者資格の消失とその影響
75歳を迎えると、被扶養者として加入していた健康保険の資格も、自動的に失われます。これは、被保険者と同様に後期高齢者医療制度への移行が義務付けられているためです。
この変化により、これまで負担していなかった保険料の支払いが発生するケースがあります。被扶養者としては保険料を自己負担していなかった人でも、後期高齢者医療制度では原則として個人単位で保険料を納める必要があります。経済的な負担が増えると感じる方も少なくありませんが、実際には所得に応じた軽減措置が設けられており、年金収入だけで暮らしているような高齢者には配慮されています。
また、被扶養者資格の喪失により、医療機関や薬局での対応にも注意が必要です。75歳の誕生日以降、旧保険証(家族の健康保険の保険証)を使おうとすると、無効扱いになってしまい、自己負担が全額請求されるリスクもあります。新しい保険証が届いたら、古いものとしっかり入れ替えておくことがとても大切です。
被扶養者であることに慣れていた人にとって、制度変更は複雑で不安も大きいかもしれません。しかし、後期高齢者医療制度は高齢者に適した支援体制が整っており、適正な負担で必要な医療を受けることができます。75歳の誕生日が近づいたら、制度の概要や必要な変更点について事前に確認しておくと安心です。
EPCS沖縄のLINE公式アカウントを友達追加されていますか?
この公式アカウントでは、プロ目線の社会保険や給与計算、助成金関係など、有益な情報をタイムリーに届けるために活用しています。
この機会に、以下のリンクをタップし、友達追加してください。
2.2 国民健康保険への切り替えの流れ
一般的には75歳になると自動的に後期高齢者医療制度へ移行しますが、何らかの理由でスムーズに移行されないケースも存在します。例えば、住民票の異動が直前にあったり、制度上の処理にタイムラグが生じたりした場合、一時的に国民健康保険へ加入する必要が出てくることがあります。
このような事態は稀ではあるものの、発生すると医療機関での保険適用に支障をきたす恐れがあります。本人が何らかの理由で後期高齢者医療制度の保険証を受け取っていない場合、誤って無保険状態と見なされてしまうケースもあるため注意が必要です。その場合、市区町村の役所で仮の保険証を発行してもらうか、国民健康保険の一時的な加入手続きを行うことで、医療費負担を軽減する対応が可能です。
なお、切り替えの手続きには、誕生日を証明する身分証明書や、住民票、以前の保険証などが必要になることがあります。役所に出向く前に、必要書類を電話などで確認しておくとスムーズです。
3.後期高齢者医療制度の負担額と軽減措置を確認する
3.1 後期高齢者医療制度における自己負担割合の仕組みと実際の金額感
後期高齢者医療制度では、75歳以上のすべての人が対象となり、医療費の自己負担割合が明確に定められています。この制度の最大の特徴は、所得に応じて1割、2割、3割という3段階で負担割合が変わる点にあります。多くの人は1割負担に該当しますが、一定以上の所得がある人については2割または3割に設定されることになります。
実際にかかる費用の感覚を具体的に示すと、例えば1回の外来診療で1万円の医療費が発生した場合、自己負担が1割であれば1,000円、2割であれば2,000円、3割であれば3,000円となります。
長期の治療や入院が必要な場合には、この負担割合が家計に与える影響も大きくなります。こうした医療費の自己負担に備えるためには、自分がどの区分に該当するのかをきちんと把握しておくことが不可欠です。
さらに注意したいのが、毎年見直される所得基準です。前年の所得によって負担割合が決まるため、年金以外の収入がある人や、不動産収入・株式収入などがある人は思わぬタイミングで負担区分が変わる可能性もあります。
自治体から届く「負担割合の通知書」を必ず確認し、不明点がある場合は窓口で相談することが重要です。
3.2 保険料の決まり方と実際の負担額の目安を知っておく
後期高齢者医療制度の保険料は、全国一律ではなく、都道府県単位で設定されています。また、保険料の計算方法は「均等割」と「所得割」という2つの要素によって決まります。「均等割」はすべての加入者が等しく負担する部分で、「所得割」は前年の所得に応じて追加で課される保険料です。
たとえば、年金収入のみで他に所得がない方の場合、保険料は年額で3万〜5万円程度が一般的です。一方で、不動産所得や株式配当などがある方は、それらを含めた所得に応じて保険料が上乗せされ、年間10万円を超えるケースもあります。
さらに、保険料は原則として年金からの天引き(特別徴収)で支払われますが、年金収入が年間18万円未満の方などは、納付書による支払い(普通徴収)になる場合があります。支払い方法が変わることで、家計の資金繰りや口座管理にも注意が必要になります。
保険料の負担は、年齢とともに変化する医療ニーズに対応するための重要な財源です。とはいえ、制度への理解が不十分なまま高額な保険料通知を受け取り、驚く方も少なくありません。加入前に自治体の窓口や公式サイトなどでシミュレーションを行っておくと、自身の収入に応じた保険料の目安を把握できます。
生活設計において、医療保険料の負担は避けられない支出です。そのため、収入の見通しや年金の額と照らし合わせて、事前に納付スケジュールを立てておくと、急な支出に慌てることなく対応することができます。
3.3 軽減措置の種類と申請方法のポイント
後期高齢者医療制度では、経済的に困窮している高齢者のために、さまざまな軽減措置が設けられています。代表的なものとして、「保険料の軽減」「自己負担割合の軽減」「高額療養費制度の適用」などがあります。
たとえば、住民税非課税世帯に属している人は、保険料が7割・5割・2割と段階的に軽減される制度が利用できます。この判定は、世帯全体の課税状況によって決まるため、自分だけでなく同一世帯の家族の所得状況も影響します。
さらに、医療費が高額になった場合には「高額療養費制度」により、一定の上限額を超えた分が払い戻される仕組みがあります。これは医療機関での支払い後に申請することで、数カ月後に返金される形が多いため、事前に制度を知っておくことで出費に対する不安を軽減することができます。
申請の際には、住民票、所得証明書、保険証などが必要となるケースが多く、申請期間も決まっていることがあります。また、知らないままで申請の時期を逃すと、軽減措置が適用されないということも起こり得ます。
制度は毎年のように見直されており、前年には該当しなかった軽減措置が、今年は適用可能になるというケースもあります。年に一度は必ず最新情報を確認し、自分の生活状況に合った支援制度を最大限活用することが、安心した生活に直結します。
EPCS沖縄では、社会保険業務のアウトソーシングで企業のサポートをしています。
人事や労務についてを「ワンストップ」で行える仕組みを用意しています。
専門家に任せたいと考えているが、どこに依頼していいのかわからない。
そんなお悩みを抱えている方は、以下のリンクをクリックし一度弊社までお問い合わせください。
最適なご提案をさせていただきます。
4.75歳に達した時に企業が行うべき社会保険手続きとは

4.1 企業が行う健康保険の資格喪失届の提出
従業員が75歳の誕生日を迎えると、企業は必ず「健康保険資格喪失届」を提出しなければなりません。この手続きは、健康保険法に基づいて義務付けられており、75歳を超えても働き続けている従業員に対しても例外ではありません。資格喪失届を出さないまま放置すると、社会保険料の過払いが発生したり、従業員が医療機関で保険証の不備によりトラブルに巻き込まれたりするリスクがあります。
この手続きのタイミングは非常に重要で、原則として従業員の誕生日の翌日から5日以内に届け出を行う必要があります。例えば、8月10日が誕生日であれば、8月11日から8月15日までに手続きを完了させる必要があります。この期間を過ぎると、行政からの指導や指摘を受けることもあるため、事前にスケジュールを組んでおくことが求められます。
手続きに必要な書類は、「健康保険・厚生年金保険 資格喪失届」となっており、日本年金機構のウェブサイトからダウンロード可能です。また、提出先は事業所の管轄する年金事務所であり、原則として郵送や電子申請も可能です。業務効率化のために、電子申請システム(e-Gov)を導入している企業も増えています。
資格喪失届の提出を怠ると、従業員が後期高齢者医療制度に加入しているにもかかわらず、旧保険証が有効扱いされてしまう可能性があり、実際の保険適用に混乱を招きます。また、企業側が不正確な保険料を納付し続けてしまい、後に精算の手間が発生することにもつながります。
従業員の健康保険資格が失効するということは、企業の社会保険管理において非常に重要なポイントです。誕生日が近づいたら社内で対象者を事前にピックアップし、確実に手続きが行える体制を整えておくことが、企業のコンプライアンス維持と従業員の安心につながります。
4.2 年金機構への必要な書類の提出
75歳になった従業員に関するもう一つの重要な手続きが、日本年金機構への各種書類の提出です。健康保険の資格喪失と並行して、厚生年金保険の取り扱いについても確認が必要です。
基本的に、70歳以上の従業員については厚生年金の被保険者とはならないため、75歳で特別に資格が変わるわけではありませんが、報酬に関する届出義務は引き続き存在します。
具体的には、「70歳以上被用者報酬月額変更届」や「賞与支払届」など、従業員の報酬が変動した場合に提出が必要な書類があります。
さらに、従業員が75歳の誕生日を迎えた時点での雇用継続の有無によっても提出書類が変わります。退職を予定している場合は、退職日を明記した報告書を提出する必要がありますし、継続して雇用する場合は報酬の変動があるかどうかを記載した届出を行うことになります。
これらの手続きはすべて、企業の労務担当者が正確に把握し、迅速に対応する必要があります。特に75歳という節目は、健康保険・年金保険・医療制度など複数の制度が重なるタイミングであるため、届出の漏れや遅れがないようチェックリストの作成などを活用するとよいでしょう。
年金機構とのやり取りがスムーズに行えるよう、事前に最新の提出様式や提出先の確認を行っておくことも重要です。毎年内容が見直される可能性もあるため、厚生労働省や日本年金機構の公式サイトを定期的に確認し、正しい情報に基づいた手続きを行う体制を整えることが求められます。
5.75歳を迎える従業員がいる場合の注意点とは
5.1 よくある見落としとその対策
従業員が75歳を迎えるタイミングでは、企業側にとっても複数の注意点があります。特に社会保険に関する手続きについては、毎月のルーティン業務とは異なり、「年齢」による制度変更という特殊な条件が絡むため、見落としが起こりやすいのが現実です。長年勤めている社員であっても、75歳の誕生日を境に適用される制度が大きく変わるため、社内の対応が追いついていないケースも少なくありません。
最もよくあるミスは、健康保険の資格喪失届を提出し忘れることです。この届出は、従業員が75歳の誕生日を迎えた翌日から5日以内に提出しなければならないと定められていますが、業務繁忙期と重なったり、担当者が交代していたりすると、うっかり忘れてしまうことがあります。
資格喪失届を出さないままでいると、企業側が不要な保険料を支払い続けることになり、後日精算が必要となるうえ、従業員本人にも不利益が生じます。医療機関で保険証が無効と判断されるなど、トラブルになる可能性も否定できません。
次に見落とされがちなのが、保険証の取り扱いです。75歳を迎えると後期高齢者医療制度の保険証が新たに交付されるため、それまで使用していた健康保険証は回収・破棄しなければなりません。ところが企業内での案内が不十分だと、従業員が古い保険証を使い続けてしまい、医療機関でトラブルに発展することもあります。
また、企業としては厚生年金に関する手続きは必要ないと考えがちですが、75歳以降も雇用を継続する場合は、報酬の届け出などを行う必要があります。これは「70歳以上被用者」に対する特例的な扱いで、制度への理解が浅いままでは見過ごされやすいポイントです。
こうした見落としを防ぐには、まず社内で「年齢到達による手続きリスト」を作成し、75歳の誕生日を迎える従業員がいた場合には、総務部門で一括管理できる仕組みを整えることが大切です。誕生日の一カ月前を目安に通知を出し、必要な書類や手続きの案内を本人および関係部署に伝えるようにすることで、ミスを未然に防ぐことが可能になります。
さらに、定期的な社内研修や労務担当者向けの情報共有会を開催することで、制度変更の知識をアップデートし続けることが重要です。とくに、法改正や通知基準の変更が頻繁に行われる社会保険分野では、最新情報の把握が企業の信頼にも直結します。
高齢者雇用が増加する中で、75歳という節目は、単なる「誕生日」ではなく、制度上の大きな転換点でもあります。見落としを防ぐための準備と体制づくりは、従業員に対する企業の誠実な姿勢を示す重要な取り組みとなります。
EPCS沖縄のLINE公式アカウントを友達追加されていますか?
この公式アカウントでは、プロ目線の社会保険や給与計算、助成金関係など、有益な情報をタイムリーに届けるために活用しています。
この機会に、以下のリンクをタップし、友達追加してください。
6.75歳以上になった後の保険証の取り扱いに注意
6.1 後期高齢者医療制度の保険証と旧保険証の区別・管理に注意する
75歳の誕生日を迎えると、これまで使っていた健康保険証は無効となり、新たに後期高齢者医療制度の保険証が発行されます。多くの方は、誕生月の前月末頃に新しい保険証が自宅に郵送されるため、それを受け取った段階で旧保険証と入れ替える準備を始める必要があります。
新しい保険証には、本人の氏名や住所、保険者番号のほか、自己負担割合(1割・2割・3割など)が明記されています。この情報は医療機関や薬局での診療・処方の際に使用されるため、間違った保険証を提示すると、全額自己負担になる、あるいは医療費の返還を求められるといったトラブルに発展しかねません。とりわけ、高齢者本人が一人で病院に通っているケースでは、こうした間違いが起こりやすいため、家族がしっかりサポートしておくことが重要です。
旧保険証については、企業の健康保険組合や協会けんぽからの指示に従い、返却を求められる場合があります。返却しないまま放置すると、紛失や不正利用といったリスクが伴うため、安全のためにも速やかに対応すべきです。仮に返却の必要がない場合でも、はさみを入れて物理的に無効化しておくなどの処置を施し、誤って使用することのないようにしましょう。
また、後期高齢者医療制度の保険証は、有効期限が定められており、原則として1年ごとに更新されます。更新時期になると、保険者から新しい保険証が届くため、こちらも期限切れの旧保険証と差し替えが必要です。この更新を忘れると、知らずに期限切れの保険証を持ち歩いてしまい、医療機関で受付ができなくなる恐れがあります。
高齢になると、こうした書類管理や制度の切り替えに不安を感じる方も多いのが現実です。保険証の切り替えに際しては、家族やケアマネジャー、地域包括支援センターの協力を得ることも有効です。わずかな手続きミスが大きなトラブルにつながることもあるため、75歳以降の保険証管理は慎重に、計画的に行うことが求められます。
7.厚生年金は75歳になっても関係するのか

7.1 厚生年金の適用は70歳までだが届出義務は75歳以降も存在する
厚生年金保険は、原則として70歳になる月の前月末で加入資格が終了します。そのため、75歳になった時点ではすでに厚生年金の「被保険者」ではなくなっていることが通常です。このことから、多くの方が「もう年金保険料のことは気にしなくていい」と考えがちですが、実は75歳以降も企業として一定の届出義務が残っていることはあまり知られていません。
75歳以上でも引き続き働いている高齢者は増加傾向にあり、こうした方々の報酬に関する情報は、日本年金機構へ引き続き報告する必要があります。たとえば、「70歳以上被用者月額報酬届」や「賞与支払届」など、年金保険料の徴収対象外であっても、報酬の変動に伴う報告義務は残るのです。これは、年金の受給額に影響する「在職老齢年金」の調整にも関わってくるため、企業と従業員の双方にとって非常に重要な手続きです。
さらに、在職老齢年金の仕組みにより、報酬額が一定の水準を超えると年金の一部または全額が支給停止になる可能性があります。75歳を過ぎた従業員でも、厚生年金の受給を受けながら働き続けている場合、この調整が適用されるかどうかを確認することが必要です。報酬が高額であれば、月々の年金額が減額されることもあるため、企業としても従業員への説明責任が求められます。
一方で、企業側が報酬の届け出を怠った場合、年金支給の過払いが発生し、後に従業員が返金を求められるという事態になることもあります。こうしたトラブルは、従業員の信頼を損ねるだけでなく、企業のコンプライアンスにも関わる重大な問題です。
厚生年金に加入しない年齢になったからといって、企業の義務が完全になくなるわけではありません。継続して雇用している限りは、報酬の動きに応じた届出を行い、年金機構と正確に情報を共有していくことが、円滑な年金受給と安心した高齢者雇用の基盤になります。特に高齢者雇用に積極的な企業では、こうした年齢を超えての制度対応力が、社内外の評価を大きく左右する要素となっています。
8.家族が75歳を迎えるときの被扶養者の取り扱いに注意
8.1 扶養されていた家族が75歳になると制度が大きく変わる
家族の中に75歳を迎える人がいる場合、その人が健康保険の「被扶養者」であったならば、制度上の大きな変化が生じます。これまで扶養者の社会保険に付随する形で医療保障を受けていた人が、75歳を迎えたその日から「後期高齢者医療制度」の被保険者として独立する形になります。これは制度上の自動移行であり、本人の意思とは無関係に適用されるルールです。
被扶養者から外れることで、本人が個人で保険料を支払う必要が生じ、家族全体の家計にも影響を与える場合があります。たとえば、世帯に年金以外の収入がなく、被扶養者として保険料を負担していなかった場合、新たに月額で数千円から一万円前後の保険料が発生することになります。年金収入が限られている世帯にとっては、わずかな変化であっても生活設計に影響を与えかねません。
また、75歳到達を機に保険証も切り替わりますが、家族がその管理を担っていた場合、見落としや誤使用のリスクが高まります。医療機関で旧保険証を提示してしまうと、無効扱いとなり、全額自己負担で診療費を請求されることもありえます。こうしたトラブルを避けるには、家族間での情報共有と手続きの確認が欠かせません。
さらに、税制上の扶養控除についても見直す必要があります。75歳になると、公的医療保険の枠組みが変わるだけでなく、被扶養者としての扱いに応じて、扶養者の所得税控除の適用条件も変動する可能性があります。具体的には、老人扶養親族に該当するかどうか、所得の上限を超えていないかなど、細かな要件を確認する必要があります。誤って控除を適用し続けてしまうと、確定申告時や年末調整で修正を求められることになります。
制度の切り替えは本人にとって大きな転換点であり、家族にとっても生活設計を見直すタイミングとなります。できるだけ誕生日の1~2カ月前には、役所や保険者からの通知を確認し、手続き漏れや誤解が起きないよう対策を講じておくことが大切です。とくに介護が必要な高齢者がいる家庭では、本人ではなく家族が手続きを担うケースが多いため、事前の備えがトラブルを防ぐカギとなります。
9.退職後に75歳を迎える人の保険手続きとは
9.1 任意継続から後期高齢者医療制度への移行に注意する
退職後、健康保険の任意継続制度を利用している人は少なくありません。この制度は最長2年間にわたり、退職前に加入していた健康保険を継続できる仕組みで、多くの人にとって安心材料となっています。しかし、任意継続の期間が残っていたとしても、75歳の誕生日を迎えた時点でその資格は自動的に終了します。制度の性質上、75歳以上はすべて後期高齢者医療制度に移行することが法律で定められているからです。
移行に伴い、新しい保険証が誕生日の前月に送付されます。これを受け取ったら、旧保険証との入れ替えを行い、医療機関に提示する際には新しい保険証を使用しなければなりません。特に任意継続を利用していた人は「まだ期間が残っているから大丈夫」と勘違いしやすいため、誕生日のタイミングに合わせてきちんと切り替えることが重要です。
また、支払い方法も大きく変わります。任意継続では保険料を自ら振り込んでいたのに対し、後期高齢者医療制度では原則として年金からの天引き(特別徴収)が行われます。年金額が少なく、天引きができない場合には普通徴収(納付書払い)に切り替えられるため、事前にどちらの方法になるのかを確認しておくと安心です。
誤って旧保険証を使用してしまった場合には、医療費が一旦全額自己負担になり、後から返金申請を行う手間が生じます。こうしたトラブルを避けるには、保険証の管理を徹底し、誕生日直前に古い保険証を確実に処理しておくことが望まれます。
9.2 退職と75歳到達が重なる場合の注意点
退職と75歳到達がほぼ同時期に重なるケースもあります。この場合、退職に伴う健康保険資格喪失の手続きと、75歳到達による制度切り替えが同時進行するため、非常に複雑になりがちです。たとえば、退職日に健康保険を喪失してから国民健康保険へ一時的に加入し、その直後に後期高齢者医療制度に移行する流れになる場合があります。
こうしたケースでは、二重に手続きを行わなければならないことがあり、役所での確認が欠かせません。退職証明書や年金に関する情報、本人確認書類などが必要になるため、必要書類を整理した上で役所の窓口に出向くことが重要です。特に国民健康保険への一時加入が必要な場合、短期間であっても保険料が発生することがあるため、予期せぬ出費として備えておく必要があります。
さらに、退職時に会社から発行される健康保険資格喪失証明書は、後期高齢者医療制度や国民健康保険への切り替えの際に必須となる場合があります。この証明書を受け取っていないと、窓口での手続きが滞る可能性があるため、必ず会社に依頼して発行してもらうことを忘れてはいけません。
退職と75歳到達が重なると、本人にとっても家族にとっても負担が大きくなりがちです。そのため、できるだけ事前に社労士や自治体の保険窓口に相談し、どのような流れになるのかを確認しておくと安心です。スムーズな移行を行うことで、医療費の自己負担や手続き漏れによるトラブルを未然に防ぐことができます。
10.まとめ
75歳を迎えると、社会保険の仕組みが大きく変わります。これまで加入していた健康保険の資格を喪失し、自動的に後期高齢者医療制度へと切り替わることで、医療制度の枠組みそのものが変わります。この移行は自動的に行われるため、本人が手続きを行わなくても基本的には問題ありません。しかし、保険証の受け取りや切り替え、資格喪失届の提出、家族の扶養関係の調整など、細かな部分で確認や対応が必要になります。
企業にとっても、従業員が75歳を迎える際には重要な対応が求められます。健康保険の資格喪失届の提出や厚生年金に関する報告義務など、忘れてはならない手続きがあります。
これを怠れば、不要な保険料を払い続けることになったり、従業員本人に不利益が生じたりする可能性があるため、事前の準備が不可欠です。さらに、保険証の返却や年金との調整など、従業員への説明やサポートも企業の責任といえます。
社会保険制度は複雑ですが、75歳到達という節目にしっかりと手続きを確認しておくことで、その後の生活を安定させることができます。早めに準備を始め、自治体や企業、家族と連携して対応することが、不安を減らし安心につながります。
中小企業では、社会保険の手続きは人に依存しやすく属人化しがちで担当者が急に休めば、すぐに業務が滞るリスクもあります。
EPCS沖縄では、仕組みで解決する現代に合わせ、社会保険業務のアウトソーシングでサポートしています。
安定した体制を保ちながら、コストも最適化したい方は、一度弊社までお問い合わせください。
