2025年6月2日
企業として従業員を雇用する際、必ず対応しなければならないのが「雇用保険」の手続きです。
特に「雇用保険適用事業所」に該当する場合、申請や届出を怠ると法的リスクや従業員との信頼関係に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、雇用保険制度は仕組みが複雑で、適用の判断基準や手続きの流れについて不明確なままにしている事業主も少なくありません。
この記事では、「雇用保険適用事業所」とは何かという基本から、具体的な申請方法、違反した場合のリスクまで、体系的かつわかりやすく解説します。
制度を正しく理解し、適切に対応することで、安心かつ健全な事業運営を実現しましょう。
目次
1.雇用保険適用事業所とは?
1.1 「雇用保険の適用を受ける事業所」のこと
1.2 雇用保険の適用事業所として申請が必要になる条件
2.雇用保険適用事業所にならないケースもあるため注意が必要
2.1 基本的に雇用保険は強制加入の保険
3.雇用保険の基本的な仕組みを押さえておこう
3.1 雇用保険とは労働者の「失業や休業」に備える制度
3.2 雇用保険の被保険者となる条件
3.3 雇用保険と社会保険の違いとは
4.雇用保険は2017年から適用範囲が拡大している
4.1 65歳以上も雇用保険の対象範囲に
5.雇用保険適用事業所には2種類がある
5.1 強制適用事業所とは
5.2 任意適用事業所とは
6.雇用保険の適用は会社単位ではなく事業所単位で判断される
6.1 事業所ごとに加入の必要性を確認する
7.雇用保険適用事業所を設置するための手続き方法
7.1 適用事業所の設置に必要な各種書類を提出する
7.2 雇用時には『雇用保険被保険者資格取得届』を提出する
7.3 そのほか必要な書類
8.雇用保険適用事業所を設置しない場合のリスク
8.1 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
8.2 従業員から損害賠償請求される可能性も
9.従業員を雇用する場合は原則として雇用保険へ加入が必要
9.1 雇用保険への加入は企業の義務であり信頼の証でもある
1.雇用保険適用事業所とは?
1.1 「雇用保険の適用を受ける事業所」のこと
雇用保険適用事業所とは、厚生労働省が定める一定の基準に従い、雇用保険の制度に加入すべき義務がある事業所を指します。労働者の保護を目的とした制度の中でも、雇用保険は失業や育児・介護などによる収入減少時に支援を行う極めて重要な仕組みであり、その適用範囲は年々広がっています。事業主にとっては「適用事業所」であることが、制度に参加する起点であり、従業員の生活の安全網を確保する責任を担う証でもあります。
しかし、こうした重要な定義について十分に理解していない事業主も少なくありません。
適用事業所としての認識が不足していると、手続き漏れや違法状態が生じるおそれがあり、それによって労働者が受けるべき保険給付を受けられなくなるなどの深刻な問題を引き起こす可能性があります。
1.2 雇用保険の適用事業所として申請が必要になる条件

雇用保険の適用事業所となるために重要なのは、「条件を満たした段階で、自動的に義務が生じる」という点です。つまり、事業主が届け出をしない限り制度上の責任が発生しないわけではなく、条件を満たした時点で法律上の義務が発生することになります。
その条件の一つが、労働者が「31日以上の雇用見込みがある」ことです。
たとえば、短期のアルバイトであっても、雇用契約の内容や実態が31日を超えると見込まれる場合、それは適用の対象になります。
もう一つの基準は「週所定労働時間が20時間以上である」ことです。
これはパートタイム労働者も含めて判断されるものであり、フルタイムで働いていなくても、制度の対象となる可能性があるということを意味します。
さらに注意すべき点として、上記の条件を満たす労働者が「1人でもいる場合」、事業所は強制的に適用事業所と見なされます。したがって、「まだ小さな規模の会社だから」あるいは「個人経営でパートタイムしか雇っていないから」といった理由で手続きを後回しにするのは、極めて危険です。
該当する場合は速やかに「雇用保険適用事業所設置届」を提出し、法的な責任を果たす必要があります。
2.雇用保険適用事業所にならないケースもあるため注意が必要
2.1 基本的に雇用保険は強制加入の保険
雇用保険制度は、原則として日本国内で労働者を雇用するすべての事業所に対し、加入を義務付けています。これは、労働者が失業した場合や、育児・介護で働けなくなった場合などに、経済的な支援を受けられるようにするためのセーフティネットとして、極めて重要な役割を果たすからです。労働力が企業の基盤である以上、労働者の生活を保障する制度への適正な加入は、事業継続のためにも不可欠といえるでしょう。
しかしながら、すべての事業所が自動的に雇用保険適用事業所となるわけではありません。特定の条件に該当しない場合や、雇用形態によっては、適用外となるケースも存在します。ここで誤解が生じやすいのが「誰を雇っているか」によって義務の有無が変わる点です。
たとえば、事業主が家族だけで運営しており、雇用契約に基づく第三者を一切雇っていない場合、その事業所は適用対象外となることがあります。さらに、労働者が雇用保険の加入条件を満たしていない、たとえば週20時間未満の短時間勤務で、かつ31日未満の短期契約である場合なども、保険の適用対象にはなりません。
とはいえ、これらの適用除外ケースはあくまで例外です。
ほとんどのケースでは、1人でも適用要件を満たす労働者を雇用した時点で、事業所は雇用保険の適用事業所とみなされます。この点を見誤ると、「自分の事業には該当しない」と思い込んだまま手続きを怠るリスクが高くなります。
さらに、外国人労働者を雇用している場合にも注意が必要です。在留資格の種類や勤務形態によっては、雇用保険の対象外となることがありますが、基本的には日本人と同様に週20時間以上・31日以上の雇用が見込まれる場合は、加入義務が発生します。判断に迷う場合は、ハローワークや労働局などの公的機関に確認を取ることが重要です。
3.雇用保険の基本的な仕組みを押さえておこう
3.1 雇用保険とは労働者の「失業や休業」に備える制度
雇用保険とは、働く人々が失業、育児、介護などで一時的に働けなくなった場合に、生活の安定と再就職支援を目的として給付を行う国の保険制度です。企業に勤めている人のほとんどが加入対象となり、働く人の経済的なリスクを緩和するための基盤として機能しています。
この制度の重要なポイントは、「労働者が失業したときに次の職を見つけるまでの間、一定の収入を保障する」という役割を果たしている点です。
雇用保険に加入していなければ、失業した瞬間に無収入となり、生活が立ち行かなくなるリスクがあります。とくに家計の主たる収入源である世帯にとって、雇用保険の存在はまさに「最後の砦」と言えるでしょう。
さらに雇用保険は、単にお金を給付するだけの制度ではありません。失業者に対する職業訓練やハローワークを通じた再就職支援など、再び働ける環境を整えるための幅広いサービスが含まれています。これにより、単なる給付制度にとどまらず、労働力の流動性を高め、日本経済全体の雇用の安定にも貢献しています。
したがって、事業主は雇用保険の制度設計を正しく理解し、自社の労働者が必要なときに支援を受けられるよう、適切な手続きを行う責任があります。
雇用保険とは?については、こちらの記事内で詳細に説明していますので、一度ご覧いただければと思います。
関連記事:雇用保険とは?公務員は関係ない?退職時の手当や対処法を徹底解説
3.2 雇用保険の被保険者となる条件
雇用保険に加入する最も基本的な条件は、「31日以上の雇用見込みがある」ことと、「週の所定労働時間が20時間以上である」ことの2点です。この2つの要件を同時に満たす場合、その労働者は原則として雇用保険の被保険者となります。
たとえば、アルバイトやパートタイム労働者であっても、これらの条件をクリアしていれば、正社員と同じように雇用保険に加入する義務があります。反対に、週15時間勤務で3週間のみの短期契約であれば、条件を満たしていないため、適用外となります。
また、被保険者にはいくつかの種類があり、一般被保険者のほか、高年齢被保険者(65歳以上)、短期雇用特例被保険者(季節労働者など)、日雇労働被保険者など、それぞれに応じた枠組みが用意されています。
3.3 雇用保険と社会保険の違いとは
雇用保険と社会保険は、しばしば混同されがちですが、目的や制度の運用主体、適用基準などに明確な違いがあります。まず、雇用保険は「労働者の失業や再就職」を支援することが目的で、厚生労働省の所管のもと、公共職業安定所(ハローワーク)を通じて運用されています。
一方、社会保険は、健康保険・厚生年金保険・介護保険・労災保険などから構成されており、「医療・年金・介護・労働災害」など広範な生活リスクをカバーする制度です。社会保険の手続きは、主に年金事務所や健康保険組合などを通じて行われます。
このように、雇用保険と社会保険は似て非なるものであり、それぞれが異なる役割を担っています。企業側としては、これらの制度を混同せず、それぞれの要件に応じた適切な保険加入と手続きを行うことで、労働者の権利を守ることが求められます。
4.雇用保険は2017年から適用範囲が拡大している
4.1 65歳以上も雇用保険の対象範囲に
少子高齢化の進行や定年延長の流れを背景に、2017年1月の制度改正により、65歳以上の労働者も雇用保険の対象に加えられることとなりました。これは、高年齢者の就業機会を確保し、経済活動への参加を促すことを目的とした大きな制度変更です。
具体的には、改正前まで「64歳以上で新たに雇用された者」は雇用保険の被保険者にはなりませんでしたが、改正後は「65歳以上であっても雇用保険の加入条件を満たせば、被保険者として扱われる」ようになりました。これにより、高齢者でも失業時に失業給付を受けられるなど、一定の保障を受けられる体制が整えられました。
背景には、労働市場における高年齢者の比率増加があり、年金支給開始年齢の引き上げや生活費の長期化により、高齢期における就労の必要性が高まっている現実があります。企業にとっても、経験豊富な高齢人材の活用は生産性の向上や人手不足の緩和といった効果が期待されるため、双方にとって意義のある制度改正といえるでしょう。
このように、2017年の改正により、65歳以上の雇用者に対しても雇用保険の保障が拡大されたことは、今後さらに進行する高齢社会に対応するための制度的な基盤整備であり、事業主にとっても無視できない重要な変化となっています。したがって、企業は高年齢者を雇用する際にも、雇用保険の適用要否を適切に判断し、必要な手続きを怠らないよう十分な注意が必要です。
雇用保険についても、専門家である社労士が最適なご提案をしております。ご検討中の方は一度お問合せください。
EPCS沖縄では、社会保険業務のアウトソーシングで企業のサポートをしています。
人事や労務についてを「ワンストップ」で行える仕組みを用意しています。
今回の「雇用保険」に関しての知識も専門家に聞きたい!と考えているが、どこに依頼していいのかわからない。
そんなお悩みを抱えている方は、以下のリンクをクリックし一度弊社までお問い合わせください。
最適なご提案をさせていただきます。
5.雇用保険適用事業所には2種類がある
5.1 強制適用事業所とは
雇用保険制度の中で「強制適用事業所」という区分は、労働者を1人でも雇用し、その労働者が雇用保険の加入条件(週20時間以上かつ31日以上の雇用見込み)を満たしている場合に該当します。これは事業の規模や業種に関係なく、全国すべての事業所に一律で適用される原則です。
この「強制」という言葉の意味は、事業主が届け出を怠っていても、法律上は自動的に適用されるという点にあります。つまり、事業主の意思にかかわらず、条件を満たした労働者を雇用した時点で、その事業所は雇用保険の適用義務を負うということです。このため、知らず知らずのうちに違法状態に陥ってしまうケースも少なくありません。
たとえば、開業したばかりの小規模事業所であっても、パートタイマーを雇い、その勤務時間が週20時間以上・雇用期間が1か月超であれば、その事業所は「強制適用事業所」に該当します。このとき、事業主が「まだ会社として小さいから保険は不要」と判断してしまうと、法律違反の状態となり、後々罰則や追徴課税のリスクに直面する可能性があります。
このような背景から、事業を開始する際、または新たに労働者を雇い入れる際には、自社が「強制適用事業所」に該当するかどうかを必ず確認する必要があります。
5.2 任意適用事業所とは
一方、「任意適用事業所」は、雇用保険の加入要件を満たす労働者がいない場合でも、事業所側の申請と厚生労働大臣の承認により、任意で適用を受けられる制度です。この制度の目的は、条件を満たしていない場合でも、将来的な雇用環境の変化に備えて、あらかじめ雇用保険への加入体制を整えておくことにあります。
任意適用を希望する場合、事業主は「任意適用申請書」を所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に提出し、審査を経て承認を受ける必要があります。また、従業員の過半数の同意も求められるため、社内での説明と理解促進が不可欠です。
重要なのは、任意適用であっても、一度認定を受ければ「適用事業所」としての義務が発生するという点です。つまり、労働者の加入手続きや保険料の納付、資格取得届・喪失届の提出といった基本的な業務は、強制適用事業所と同様に行う必要があります。
6.雇用保険の適用は会社単位ではなく事業所単位で判断される

6.1 事業所ごとに加入の必要性を確認する
雇用保険制度の運用において、見落とされやすい点のひとつが、「雇用保険の適用は会社全体ではなく、事業所ごとに判断される」という点です。
たとえば、ある本社には正社員が多数勤務しており、明らかに雇用保険の適用事業所であるとしましょう。一方、同じ法人の支店であっても、雇用しているのが短時間勤務のパート1名のみという場合、その支店が適用事業所に該当するかどうかは、あくまでそのパートの労働条件(週20時間以上、31日以上の雇用見込みがあるか)に基づいて判断されます。
つまり、「同じ会社だからどの事業所も一律に適用される」という認識は誤りであり、労働者の雇用実態に応じて個別に確認する姿勢が求められるのです。特にフランチャイズ展開や、店舗ごとに雇用状況が異なる業態(飲食業、介護事業など)においては、この事業所単位での管理が適正に行われているかが重要なポイントになります。
また、事業所単位での判断には、法的にも根拠があります。
労働保険徴収法および雇用保険法においては、「一の場所において事業が行われている場合、その場所を一事業所とする」という明確な定義が設けられており、これに基づいて保険料の徴収および資格取得の手続きが行われます。
企業側がこの制度趣旨を誤解していると、本来適用すべき事業所の届け出を怠るなど、手続き上の不備が生じやすくなります。結果として、労働者が失業給付などの支援を受けられなくなり、法令違反と見なされるリスクもあります。さらに悪質と判断されれば、罰則の対象となり、企業の社会的信用にも重大なダメージを与える可能性があります。
各拠点の管理責任者にも正しい知識を共有し、組織全体としてのコンプライアンス体制を整えることが、リスク回避と健全な労務管理につながります。
7.雇用保険適用事業所を設置するための手続き方法
7.1 適用事業所の設置に必要な各種書類を提出する
雇用保険適用事業所を正式に設置するには、まず必要書類を整えて管轄のハローワークや労働基準監督署に提出することが不可欠です。この手続きは、労働者を雇い入れた段階で速やかに行うべきもので、遅れると労働者が雇用保険の給付を受けられないなどの問題が生じる可能性があります。
最も基本となるのは「雇用保険適用事業所設置届」です。この書類は、新たに雇用保険の対象となる事業所を設けた際に提出するもので、事業の概要、所在地、事業主情報、雇用の実態などを記載します。
また、提出の際には「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」や「賃貸契約書(事業所の所在地証明)」など、事業所の実在性を確認するための書類も求められることがあります。
このように、適用事業所の設置には複数の書類と手続きが求められますが、いずれも労働者の社会的保障を確保するための重要なプロセスです。
7.2 雇用時には『雇用保険被保険者資格取得届』を提出する
事業所の設置と同時に、雇用した労働者が雇用保険の対象となる場合には、「雇用保険被保険者資格取得届」の提出も必要です。この届出は、労働者が雇用保険に加入する際の基礎となるもので、入社日から原則10日以内にハローワークへ提出する義務があります。
この届出には、労働者の氏名、生年月日、雇用形態、週の所定労働時間、雇用期間の見込みなどを正確に記載します。また、マイナンバーの記入も必要であり、個人情報の取り扱いにも細心の注意が求められます。
仮にこの届出を怠った場合、労働者が退職した際に失業給付を受けられなくなるだけでなく、過去に遡って加入手続きや保険料の支払いを求められることになります。さらに、悪質と判断されれば、事業主に対して罰則が科されることもあるため、十分な注意が必要です。
7.3 そのほか必要な書類
雇用保険関連の手続きでは、設置届や資格取得届以外にもさまざまな書類の提出が求められる場合があります。たとえば、従業員の出勤簿や給与台帳、労働条件通知書など、実際の雇用関係を証明する資料が該当します。
これらの書類は、ハローワーク側が「その事業所が実際に雇用関係を持ち、雇用保険の適用条件を満たしているかどうか」を判断するためのエビデンスとなります。たとえ書類としての提出義務がない場合でも、立ち入り調査や問い合わせに備えて、日頃から正確かつ整然とした記録を心がけることが重要です。
一連の手続きは煩雑に見えるかもしれませんが、整備された手順に沿って対応すれば決して難しいものではありません。社内に担当者を設け、必要な知識を共有することで、労務管理のレベルを高めることができます。
EPCS沖縄のLINE公式アカウントを友達追加されていますか?
この公式アカウントでは、プロ目線の社会保険や給与計算、助成金関係など、有益な情報をタイムリーに届けるために活用しています。
この機会に、以下のリンクをタップし、友達追加してください。
8.雇用保険適用事業所を設置しない場合のリスク
8.1 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
雇用保険制度は、法律に基づく強制加入の社会保険制度であるため、適用条件を満たすにもかかわらず雇用保険の手続きを怠った場合、事業主には法的責任が発生します。具体的には、雇用保険法第83条に基づき、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
これは、単なる事務的な遅れでは済まされない重大な法令違反と位置づけられています。
雇用保険は、失業や育児・介護など、労働者にとって避けられない生活上のリスクに対する「最低限の保障」であり、それを提供すべき事業主が加入義務を怠れば、労働者は著しい不利益を被ります。
このような罰則は、企業の信用にも大きな傷を残します。行政処分の公表や報道を通じて社会的評価が下がれば、取引先や顧客からの信頼を失い、ビジネス全体に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。
そのため、労働者を1人でも雇用した時点で、適用の可能性をすぐに確認し、必要な手続きを速やかに実施することが、企業としての基本的な社会的責任であるといえます。
8.2 従業員から損害賠償請求される可能性も
雇用保険の未加入によるリスクは、法的な罰則にとどまりません。実際の運用上、さらに深刻なのが「従業員からの損害賠償請求リスク」です。これは、労働者が失業や育児休業などに直面した際、雇用保険給付を受けられなかったことに起因して、事業主に対し損害賠償を求めるというケースです。
たとえば、ある従業員が失業したにもかかわらず、雇用保険の加入手続きがなされていなかった場合、本来であれば受給できたはずの基本手当(失業給付)を受け取ることができません。これに対して労働者が不利益を受けたとして、「加入すべき義務があったにもかかわらず手続きを怠ったことは使用者責任にあたる」と主張されれば、民事訴訟に発展する可能性があります。
実際に、過去の判例でも、未加入によって労働者に損害が生じたと認定され、事業主が補償を命じられたケースがあります。
さらに、こうしたトラブルは社内外の信頼関係を著しく損ねる結果につながります。従業員の間で「この会社は保障が受けられない」「安心して働けない」といった不信感が広がれば、離職率の上昇や求人の難航といった人的資源の損失に直結します。
したがって、雇用保険の適用義務を軽視することは、法令違反にとどまらず、企業としての存続にすら関わる重大なリスクであると認識しなければなりません。
9.従業員を雇用する場合は原則として雇用保険へ加入が必要
9.1 雇用保険への加入は企業の義務であり信頼の証でもある
事業主が従業員を1人でも雇用する場合、労働者の雇用形態や勤務時間などが一定の条件を満たせば、雇用保険への加入は「原則として義務」となります。これは企業の裁量ではなく、法律によって定められた義務です。適用対象となる従業員に対して適正な手続きを行うことは、事業者としての信頼性やコンプライアンス遵守を示す基本中の基本といえるでしょう。
加入手続きを行わずに従業員を雇用した場合、万が一その従業員が失業した際に給付を受けられなくなります。これにより、労働者本人が経済的に追い詰められるだけでなく、場合によっては訴訟などの法的トラブルに発展するおそれもあります。
このように、雇用保険への加入は単なる義務ではなく、企業が「人を大切にする姿勢」を形で示すための制度です。
すべての事業主は、従業員を雇い入れる際にその責任を自覚し、法令を遵守した適切な手続きを行うべきです。信頼ある職場づくりの第一歩として、雇用保険の加入を確実に行うことが、安定経営への鍵となるのです。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
経営者にとって「人」と「労務管理」は最も重要な資産です。
だからこそ、複雑な社会保険業務を社内で抱えるよりも、専門家に任せて確実に処理することが、経営リスクを減らす最善策です。
EPCS沖縄では、アウトソーシングによって、ヒューマンエラーの防止・法令遵守・業務効率化を実現しています。
一度弊社までお問い合わせいただき、サービス内容を知ってください。
