労働保険の年度更新手続きを完全ガイド|期間・計算方法・電子申請までわかりやすく解説

2026年8月31日

毎年6月から7月にかけて、事業主が必ず対応しなければならないのが「労働保険の年度更新手続き」です。労災保険と雇用保険の保険料を計算し、申告・納付を行うこの手続きは、賃金集計や保険料率の確認など、細かい作業が求められます。「何から手をつければいいのかわからない」「計算方法が複雑で不安」と感じる担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、労働保険の年度更新の基本から、具体的な手続きの流れ、電子申請の方法、ミスしやすいポイントまで、実務目線でわかりやすく解説します。初めて担当する方も、手順を再確認したい方も、この記事を読めば安心して年度更新に臨めるはずです。

目次

1.労働保険の年度更新とはどのような手続きか
1.1 労働保険(労災保険・雇用保険)の基本
1.2 年度更新が必要な理由

2.労働保険の年度更新手続きの期間と提出先
2.1 申告・納付期限は6月1日から7月10日まで
2.2 期限を過ぎると追徴金が発生する

3.労働保険料の計算方法と申告書の書き方
3.1 賃金集計表の作成手順
3.2 概算保険料と確定保険料の計算
3.3 一般拠出金の計算も忘れずに

4.労働保険料の納付方法と分納・口座振替の活用

5.労働保険の年度更新は電子申請が便利
5.1 電子申請のメリットと必要なもの
5.2 電子申請の具体的な流れ

6.労働保険の年度更新手続きでよくあるミスと対策

1.労働保険の年度更新とはどのような手続きか

労働保険の年度更新は、事業主が毎年必ず行う重要な手続きです。まずは制度の全体像を押さえておきましょう。

年度更新とは、前年度に支払った賃金をもとに「確定保険料」を算出し、同時に今年度の「概算保険料」を申告・納付する一連の手続きを指します。労働保険は年度当初に概算で保険料を納め、年度末の実際の賃金額と照らし合わせて精算する仕組みになっているためです。

1.1 労働保険(労災保険・雇用保険)の基本

労働保険とは、労災保険と雇用保険を総称した呼び方です。労災保険は、業務中や通勤中のケガ・病気に対して給付を行う制度で、従業員を一人でも雇っていれば加入義務があります。雇用保険は、失業時の給付や育児休業給付などを行う制度で、週20時間以上働く従業員が対象です。

保険料は原則として事業主と労働者で負担しますが、労災保険料は全額事業主負担となっています。

1.2 年度更新が必要な理由

労働保険料は、実際に支払った賃金総額に保険料率を掛けて計算します。しかし年度が始まる時点では賃金総額が確定していないため、まず概算で納付する仕組みが採用されています。年度終了後に実額との差額を精算し、翌年度分をあらためて概算納付する。この一連の流れが年度更新です。

つまり年度更新を怠ると、保険料の精算ができず、追徴金や延滞金が発生するリスクがあります。毎年決まった時期に、確実に対応することが求められる手続きなのです。

2.労働保険の年度更新手続きの期間と提出先

年度更新はスケジュール管理が非常に重要です。期限を守らないと余計な費用が発生するため、まず期間を正確に把握しておきましょう。

労働保険の年度更新期間は、原則として毎年6月1日から7月10日までの約40日間です。この期間内に、申告書の提出と保険料の納付を完了させる必要があります。提出先は、所轄の労働基準監督署、都道府県労働局、または金融機関の窓口です。電子申請の場合はe-Gov(電子政府の総合窓口)を通じて提出できます。

2.1 申告・納付期限は6月1日から7月10日まで

申告書は、例年5月下旬に事業所へ送付されます。ただし電子申請が義務化されている事業場では、申告書の郵送がなくなる場合があるため注意が必要です。届いた申告書には、前年度の概算保険料額などがあらかじめ印字されているので、確認したうえで作業を進めます。

具体的なスケジュール例としては、6月上旬に賃金集計を開始し、6月中旬までに申告書を作成、6月下旬から7月上旬に提出・納付を完了させる流れが理想的です。ギリギリになると窓口が混雑するため、早めの着手をおすすめします。

2.2 期限を過ぎると追徴金が発生する

もし7月10日までに申告や納付を行わなかった場合、政府が保険料額を認定決定し、追徴金として本来の保険料の10%が上乗せされます。さらに納付が遅れた場合は、年14.6%の延滞金が発生することもあります。

たとえば本来の保険料が100万円だった場合、追徴金だけで10万円の負担増となります。忙しさで後回しにしがちですが、コスト面でも大きな影響があるため、期限厳守が鉄則です。

3.労働保険料の計算方法と申告書の書き方

労働保険料の計算は、年度更新のなかで最も時間と正確性を要する作業です。手順を分解して理解すれば、決して難しくありません。

計算の基本は「賃金総額 × 保険料率 = 保険料」というシンプルな式です。ただし賃金の集計や保険料率の適用に細かなルールがあるため、順を追って進めることが大切です。

3.1 賃金集計表の作成手順

まず前年度(4月1日から翌年3月31日まで)に支払った賃金を、労災保険対象者と雇用保険対象者に分けて集計します。役員報酬は原則対象外ですが、労働者性のある兼務役員の給与部分は含める必要があります。

賃金に含まれるのは、基本給・各種手当・賞与・通勤手当などです。一方、退職金・傷病手当・結婚祝金など臨時的なものは対象外となります。ここを間違えると保険料額が大きくズレるため、慎重に判断しましょう。

3.2 概算保険料と確定保険料の計算

賃金集計が終わったら、前年度の確定保険料を算出します。集計した賃金総額に、業種ごとの労災保険料率と雇用保険料率を掛けて計算します。次に、今年度の概算保険料を計算します。原則として前年度の賃金総額をそのまま用い、同じ料率で算出します。

差額の精算方法

確定保険料が前年度に納めた概算保険料より多ければ不足分を追加納付し、少なければ翌年度の概算保険料から充当します。

3.3 一般拠出金の計算も忘れずに

労災保険適用事業所には、石綿健康被害救済のための「一般拠出金」の納付義務があります。料率は労災保険の対象賃金総額に対して1000分の0.02(0.002%)です。金額としては小さいものの、申告書への記載漏れが多い項目なので忘れず計算しましょう。

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4.労働保険料の納付方法と分納・口座振替の活用

保険料の計算が終わったら、次は納付です。納付方法にはいくつかの選択肢があり、事業所の状況に応じて使い分けることで、資金繰りや業務効率の面でメリットが得られます。

労働保険料の納付方法は、大きく分けて「窓口納付」「口座振替」「電子納付(ペイジー)」の3つがあります。金融機関や労働局の窓口で現金納付するほか、指定口座からの自動引落し、インターネットバンキングでの支払いも可能です。

分納(延納)制度の活用

概算保険料が40万円以上(労災保険または雇用保険の片方のみの場合は20万円以上)、または労働保険事務組合に事務委託している場合、保険料を3回に分割して納付できます。第1期は7月10日、第2期は10月31日、第3期は翌年1月31日が納期限です。一括で数十万円〜数百万円の負担は大きいため、キャッシュフロー改善の観点から積極的に活用したい制度です。

口座振替のメリット

口座振替を利用すると、納付書の持参が不要になり、納付忘れも防げます。さらに納期限が窓口納付よりも約2週間〜2ヶ月遅く設定されるため、資金繰りにも余裕が生まれます。たとえば第1期の窓口納付が7月10日のところ、口座振替では9月上旬まで納付期日が延びます。事前の申込みが必要で、手続き締切は毎年2月頃なので、翌年度から利用したい場合は早めに準備しましょう。

電子納付(ペイジー)の活用

ペイジーを使えば、金融機関に出向かず、パソコンやATMから24時間納付が可能です。電子申請と組み合わせれば、申告から納付までを一切紙を使わずに完結できます。

5.労働保険の年度更新は電子申請が便利

近年、政府は行政手続きの電子化を推進しており、労働保険の年度更新も電子申請が主流になりつつあります。大企業では既に電子申請が義務化されており、中小企業でも導入が広がっています。

電子申請を活用すれば、窓口に出向く手間や郵送コストを削減でき、24時間いつでも申告が可能です。特に複数事業所を持つ企業や、テレワーク中心の総務部門にとっては大きなメリットとなります。

5.1 電子申請のメリットと必要なもの

電子申請の主なメリットは3つあります。第一に、時間と場所を選ばず申請できること。第二に、郵送費や交通費が不要になること。第三に、入力チェック機能で記入ミスを防げることです。

電子申請に必要なものは、パソコンとインターネット環境、そしてGビズID(またはICカード形式の電子証明書)です。GビズIDは無料で取得でき、複数の行政手続きに共通で使えるため、まだお持ちでない事業所は早めの取得をおすすめします。

5.2 電子申請の具体的な流れ

電子申請は次の手順で進めます。まずe-Govのポータルサイトにアクセスし、GビズIDでログインします。次に「労働保険年度更新申告」の様式を選択し、賃金総額や保険料額を入力します。入力内容を確認して電子署名を付与し、送信すれば申告完了です。

送信後は「到達番号」が発行されるので、必ず控えておきましょう。処理状況もオンラインで確認できます。納付についても、ペイジーを使えばそのまま電子納付が可能です。

市販ソフトの活用

給与計算ソフトや社労士向けソフトのなかには、労働保険年度更新の電子申請機能を搭載したものもあります。日々の給与データから自動で賃金集計表を作成できるため、大幅な時短が期待できます。

6.労働保険の年度更新手続きでよくあるミスと対策

最後に、実務で頻繁に見られるミスとその防止策を紹介します。事前に注意点を押さえておくことで、修正申告や追徴金のリスクを大きく減らせます。

年度更新でよくあるミスは、賃金の範囲を誤って集計してしまうケースです。たとえば結婚祝金や見舞金などの恩恵的給付を賃金に含めてしまったり、逆に通勤手当や住宅手当を除外してしまうケースが見られます。労働保険上の「賃金」の定義を正しく理解することが第一歩です。

保険料率の確認漏れ

労災保険料率は業種によって異なり、3年ごとに見直されます。雇用保険料率も毎年度改定される可能性があります。前年と同じ率で計算してしまうと、後日修正が必要になるため、必ず最新の料率表を確認しましょう。厚生労働省の公式サイトで公表されています。

役員報酬の取扱いミス

代表取締役や役員の報酬は原則として労働保険の対象外です。ただし、部長職などを兼務する「兼務役員」の場合、労働者としての給与部分は労災保険・雇用保険の対象に含まれます。役員報酬部分と給与部分を明確に区分して集計する必要があります。

提出書類の記入漏れ

申告書の記入では、事業主印の押し忘れ、口座振替の希望欄のチェック漏れ、電話番号の記入漏れなどが定番のミスです。提出前に必ずダブルチェックを行いましょう。

6.1 労働保険の年度更新手続きを正しく進めて負担を減らそう

労働保険の年度更新手続きは、6月1日から7月10日までの期間内に、前年度の確定保険料と今年度の概算保険料を申告・納付する重要な作業です。賃金集計から始まり、保険料率の確認、申告書の作成、納付まで、複数のステップを正確にこなす必要があります。

期限を過ぎると追徴金や延滞金が発生するため、早めのスケジューリングが不可欠です。また、電子申請や口座振替、分納制度などをうまく活用すれば、業務負担と資金繰りの両方を改善できます。ミスを防ぐには、賃金の定義や最新の保険料率をしっかり確認することがポイントです。

毎年の恒例業務だからこそ、正しい知識と効率的な進め方を身につけ、余裕を持って年度更新を完了させましょう。

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