【統計情報】「過労死等の労災補償状況」について

2025(令和7)年6月25日、厚生労働省より、令和6年度の「過労死等の労災補償状況」が公表されました。
「過労死等」とは、過労死等防止対策推進法第2条において、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。」と定義されています。過労死等に関する請求件数は、4,810件と前年度に比べ212件の増加、支給決定件数は、1,304件と前年度に比べ196件の増加という結果になっています。

以下では、「脳・心臓疾患に関する事案」、「精神障害に関する事案」それぞれの補償状況について、ご紹介させて頂きます。

まず、 「脳・心臓疾患に関する事案」の労災補償状況となります。
脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況の推移は、下記の図1の通りとなっており、令和6年度は、請求件数、決定件数及び支給決定件数の全てにおいて昨年を上回る結果となっております。
また、過労死等の労災補償状況で最も注視すべきは、時間外労働の時間数になりますが、時間外労働時間別支給決定件数は右の表1の通りとなります。
「評価期間1か月」では「100時間以上~120時間未満」が18件と最も多く、また、「評価期間2~6か月における1か月平均」では「80時間以上~100 時間未満」が63件と最も多くなっております。

 

次に、 「精神障害に関する事案」の労災補償状況となります。
精神障害に関する事案の労災補償状況の推移は、図2の通りとなっており、 請求件数、決定件数及び支給決定件数は毎年前年を上回る結果となっております。
また、脳・心臓疾患に関する事案同様に表2の時間外労働時間別(1か月平均)支給決定件数を見てみますと、先述の脳・心臓疾患のように一定の時間数を超えたものが支給決定されているというものではなことが明らかです。精神障害に関する事案については、脳・心臓疾患に関する事案とは異なり、時間外労働時間数の影響を大きく受けることなく、支給決定されていることが分かります。
これは、精神障害に関する事案の労災補償は、脳・心臓疾患に関する事案とは異なり、時間外労働時間数のみならず、労働者に生じた「出来事」も考慮し、労災認定が行われていることに起因しているところとなっております。
令和6年度に支給決定された1,055件を「出来事」別に見てみますと、以下に記載の出来事で合計902件と全体の約85%を占めているところから、下記のような状況が生じた(又は生じている)労働者に対しては、ケアをすることが、重要となってくるかと思います。 

【統計情報】「個別労働紛争解決制度の施行状況」について

2025(令和7)年6月25日、厚生労働省より、令和6年度の「個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。 「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度で、「総合労働相談」、都道府県労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。

令和7年度の総合労働相談件数は、120万1,881件と前年の121万400件と比較すると減少したものの5年連続120万件を超えています。 このうち、法制度の問合せが81万4,454件(前年比2.4%減)、労働基準法等の違反の疑いがあるものが20万7,619件(前年比7.6%増)、 民事上の個別労働紛争相談件数が26万7,755件(前年比0.6%増)となっております。
民事上の個別労働紛争の相談内容別の件数は、図2の通りとなっており、「いじめ・嫌がらせ」が54,987件と最も多く、全体の17.4%を占めております。

この「いじめ・嫌がらせ」は、平成24年度以降、毎年、最も多い相談内容となっております。その他の相談内容と致しましては、自己都合退職、解雇、労働条件の引き下げ、退職勧奨が、毎年相談内容の上位を占める結果となっており、令和6年度におきましても、例年と同様の結果となっております。
民事上の個別労働紛争につきましては、都道府県労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」により、その解決を図ることが可能となりますが、令和6年度におきましては、都道府県労働局長による助言・指導の申出件数は8,865件、紛争調整委員会によるあっせんの申請が 3,865件となっております。