【お知らせ】年末調整時における定額減税について

10月になり、多くの方が年末調整の準備に入られているのではないかと思います。人事関連業務に携われる方にとって、年間の業務の中でも最も作業ボリュームが大きいと言っても過言ではない年末調整業務を、間違いなく、かつ、効率よく実施することは、とても重要です。 さて、今年の年末調整は6月に実施された定額減税を考慮し、実施しなければなりません。言い換えれば、年末調整時における定額減税への対応が、 今年の年末調整の最大のポイントとも言えます。 そこで以下では、年末調整時における定額減税について、そのポイントをお伝えさせて頂きます。

1.年末調整の際に定額減税の対象となる人

年末調整の対象となる人が、原則として、年調所得税額(年末調整により算出された所得税額で、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合には、その控除後の金額をいいます。)から年調減税額を控除する年調減税の対象者となります。 ただし、年末調整の対象となる人のうち、給与所得以外の所得を含めた合計所得金額が 1,805万円を超えると見込まれる人については、年調減税額を控除しないで年末調整を行うことになります。

(注)年末調整において合計所得金額が 1,805万円を超えるかどうかを確認する際には、基礎控除申告書などにより把握した合計所得金額を用います。

2.年調減税額の計算

年調減税額は、「本人30,000円」と「同一生計配偶者と扶養親族1人につき30,000円」との合計額となります。 年調減税額の計算に当たっては、「扶養控除等(異動)申告書」や「配偶者控除等申告書」などから、年末調整を行う時の現況における同一生計配偶者の有無及び扶養親族(同一生計配偶者及び扶養親族はいずれも居住者に限ります。)の人数を確認することになります。 なお、同一生計配偶者(居住者に限ります。)を年調減税額の計算に含めるためには、給与所得者が、「配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る 定額減税のための申告書」にその配偶者を記載して提出する必要があります。


3.年調減税額の控除

年調減税額の控除は、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除後の所得税額(年調所得税額)から、その住宅借入金等特別控除後の所得税額を限度に行います。 また、年調減税額を控除した金額に102.1%を乗じて復興特別所得税を含めた年調年税額を計算します。

(注)年末調整終了後に作成する「給与所得の源泉徴収票」には、その「(摘要)」欄に、定額減税に関する事項の記載が必要となります。

【お知らせ】令和6年版 過労死等防止対策白書について

2024(令和6)年10月11日、厚生労働省から「令和6年版 過労死等防止対策白書」が公表されました。 「過労死等」とは、①業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡、②業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡、③死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害、を指しており、特に近年は、精神疾患による労災請求件数及び認定件数が増加している傾向もあります。そこで今回は、その内容について、いくつかのポイントをご紹介させて頂きたいと思います。

1.労働時間やメンタルヘルス対策等の状況

(1)労働時間の状況
・週労働時間が40時間以上の雇用者のうち、60時間以上の雇用者の割合は減少傾向。令和5年は令和4年から0.5ポイント
減少し、8.4%。

・業種別に令和5年の状況をみると、一部に前年より増加している業種もあるが、多くの業種では横ばい又は減少。
※前年より増加している業種:「電気・ガス・熱供給・水道業」「生活関連サービス業,娯楽業」「教育,学習支援業」
「公務」

・勤務間インターバル制度について、制度を知らない企業割合が増加した一方、制度の導入企業割合は継続的に増加
(令和5年:6.0%)。

・年次有給休暇の取得率は、8年連続で増加(令和4年:62.1%)。

(2)職場におけるメンタルヘルス対策の状況
・メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、60%前後の水準で推移(令和5年:63.8%)。

・労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェックの実施割合は、令和5年が34.6%。

・仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み又はストレスがあるとする労働者の割合は、令和5年が82.7%。

2.過労死等の現状(労災支給決定(認定)件数について)

・脳・心臓疾患は、前年度より増加し、4年ぶりに200件を超えた(令和5年度:216件)。死亡件数も前年度より増加
(同58件)。

・精神障害は、令和元年度以降、増加傾向(令和5年度:883件)。自殺(未遂を含む)件数は4年ぶりに増加
(同79件)。

3.労働行政機関等における過労死等の防止のための対策

・適用猶予業種等への時間外労働の上限規制の施行

・長時間労働の削減に向けた取組の徹底
・・・ 長時間労働が行われている事業場や過労死等を発生させた事業場に監督指導を実施

・過重労働による健康障害の防止対策
・・・ 労働時間の状況の把握や長時間労働を行った労働者への医師による面接指導等の実施を指導

・メンタルヘルス対策
・・・ 精神障害に関する労災支給決定(認定)が行われた事業場に対してメンタルヘルス対策に係る指導を実施

・ハラスメント防止対策
・・・ ハラスメント防止措置が講じられていない事業所への指導、ハラスメント事案が生じた事業所への再発防止を
指導

・過労死等を発生させた企業に対する再発防止対策

筆者:松本 好人Yoshito Matsumoto 株式会社EPコンサルティングサービス取締役 株式会社EPCS沖縄取締役 社会保険労務士法人EOS代表社員 特定社会保険労務士 法学修士、日本労働法学会所属